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32話 皆 に 激励


いよいよ明日はインターハイ本番。
練習を終えた部員はコーチに集合している。


「―俺からは以上だ。今日はゆっくり休めよ」

「ハイ!!」

「よし!じゃあ これで」

「あっちょっと待って!もうひとつ良いかな!?」


解散を告げようとした大地さんの言葉に被せるように武ちゃんが声を出すと、全員が不思議そうに武ちゃんを見た。


「清水さんから!」

「??」

「!!!」


ハテナマークをうかべる大地さんや明らかに潔子さんの名前に反応する田中とノヤ。予想通りの反応だな、と内心笑ってしまいながらも自分も潔子さんを見る。


「………激励とか…そういうの…得意じゃないので…」


潔子さんの台詞に更に首を傾げる部員たちを横目に用意していたもの潔子さんに渡すと頷きながら受け取ってくれた。


「先生お願いします」

「任せて!!」


二階に上がっていく二人を見ていると、「苗字は何か知ってる?」と旭さんに聞かれてイタズラっぽく笑って見せた所で二人の準備が整った。


「せーのっ」


バサッという音をたてて広がった黒いそれは、潔子さんと2人で綺麗にした団幕。

たった二文字の“飛べ”の字は、なんだか凄く心に響く。


「こんなのあったんだ…!」

「掃除してたら見つけたから、きれいにした」


「名前も一緒に」と潔子さんが付け足すと皆の視線がこっちに向いたのでブイサインを返しておいた。


「うおおおお!!燃えて来たアア!!」

「さすが潔子さん、良い仕事するっス!!」


「「よっしゃああああ!!じゃあ気合い入れて」」と声をあげる田中とノヤに「しっ!」と人差し指をたてると「なんだよ?」と田中とノヤが首を傾げた。

そんな二人に「多分―まだ終わってない」と大地さんが言うと、二人は更にハテナマークを浮かべた。


「…が」

「(が?)」

「がんばれ、」

「「「「「…」」」」」

『(…生きてる?)』


逃げるようにその場から離れる潔子さんを見てから23年に目を向けると微動だにしていない。
かと思った次の瞬間だった

ぶわっ


「!?」


2(田中とノヤ)3年の目から飛び出してきた涙。
これには流石にビックリした。

泣いてる人たちに苦笑いしてから潔子さんを見ると、ちょうど降りてきた所だった。


『大成功ですね!!』

「…そう、なの?」


「はい!」と頷いてから、歓喜している部員を見るとそのなかで大地さんが「よし!!」と声をあげた。


「1回戦、絶対勝つぞ!!!」

「「「「うおおおおス!!!」」」」


盛り上がる皆を見てからもう一度潔子さんを見ると、困ったように、だけど嬉しそうにはにかんでいた。










「あれ!?潔子さんは!?」

『あんた達に捕まる前にお帰りになられました』

「なんだと!?」


あれから、照れてしまったのか、さっさと帰り支度を終えた潔子さんは先に帰ってしまった。
帰り際に「頑張りましょうね!」と声をかけると、少し頬を染めて頷いてくれた。マジ女神。


校門を出るとこで会った田中とノヤにさんに潔子さんがいない理由をを言うとガーンと効果音がつきそうな程驚かれた。


「うぬぉ…潔子さんにこの感動をお伝えしなかった」

「ああ…」

『潔子さん、逃げてくれて良かった』


肩を落とす二人に笑っていると、そこに3年生も現れた。二人が項垂れている理由を説明すると三人とも納得したように笑った。


『ほらほら帰るよ!』


立ち止まっている田中とノヤの背中を押して校門を出て歩いていると、後ろを歩いていたスガさんが「そういえば、」と何かを思い付いたように声をだした。


「名前からは何もないの?」

『え?』

「激励の言葉」


ギュンっと前を向いていた二人が振り返った。
まさかの振りにスガさんを見るとにっこりと良い笑顔を向けられた。


「おお!そういえば言ってもらってないな」

『えええええ、』


こうなるなら潔子さんと早く帰れば良かった、と後悔していると、ポンっと両肩に手をおかれた。


「「ドンと来い!!」」

『…なんかスッゴい嫌なんだど…』


自分を親指で指しながらキラリと目を輝かせる同級生たちに白い目を向けた。もちろん応援する気持ちはあるけれど、こんな風に面と向かって言うのは正直照れる。

うーん、うーんと唸って助けを求めようと旭さんを見ると、ニコニコと嬉しそうに微笑まれた。
どうやら、やるしかないみたいだ。


『えーっと…ですね…』

「おう!」


コホンと息を整えると、騒いでいた田中とノヤも口を閉じた。


『私は、皆のバレーが好きです』

「??」

『でも、それと同じくらい…勝ったときの皆の笑顔が好き、』


最初よく分からない顔をしていた皆が驚いたような反応をしてくれた。

「だから、」とつけ足して皆の顔を見渡す。


『たくさんたくさん、その笑顔を見せて下さい』


「ね?」と照れ隠しに笑って見せたけれど、シーンとして返ってこない反応にもしかして外した!?と内心焦ったとき、暗いなかで皆の顔がかすかに赤くなっているように見えた。


『あ、あの…』

「ハッ!!い、いかんいかん!!…あ、危うく心臓麻痺…」

『心臓麻痺?』


いつもの倍頭の可笑しいことをいう田中に眉を寄せていると、固まっていた皆がだんだんといつもの皆に戻っていった。


『あの…変なこと言いましたか?』

「え、いや…そうじゃなくてだな…。とにかく、嬉しかったよ。苗字の台詞」


「頑張るからな」と頭を撫でてくれた大地さんに、とりあえずホッとして「はい!」と頷いておいた。



「「「「「(天然こえええええええ)」」」」」

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