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30話 清水 と 掃除


『結構綺麗になりましたね!』

「うん」


潔子さんと二人で部室を掃除しているときに団幕を見つけたのはついこの間のこと。
試合までに綺麗にして、皆を驚かせようということで、現在進行形で潔子さんとお掃除ナウ。


『大地さんの肉まん、良かったんですか?』

「そういう名前も、」

『私はこうして潔子さんと一秒でも一緒に居られることが幸せなんですよ』


「だから、肉まんなんていいんです」と胸を張って言うと、潔子さんがクスクスと笑ってくれた。
やっぱり潔子さんの笑顔は素敵。


「今日はもう片付けようか」

『はい、』


潔子さんの言葉に大きく頷いて団幕を二人で畳む。
初めての共同作業!?なんてふざけて考えていると、潔子さんの柔らかな「ところで名前は、」という声が聞こえてきた。


『はい?』

「結局、音駒の主将とどうなったの?」

『え、』


まさか潔子さんからそんな事聞かれると思ってなくて固まってしまうと、苦笑いをされた。


『あ、いや、その…自分の想いは伝えました。潔子さんが、アドバイスをしてくれたから、伝えられました!』

「ふふ、そんな大それたことじゃないよ」

『そんな!私にとって、潔子さんのお告げは神様のものよりも凄いんですよ!』

「ふふ、なにそれ」


「でも、ありがと」と眼鏡の奥で目を細めた潔子さんにブンブンと首をふって「こちらこそ、ありがとうございます」と頭を下げた。


「よし、帰ろっか」

『はい』


潔子さんの言葉に頷いて返して、校門を出た所で、潔子さんが足をとめた?
あら?と思って足を止めると、いつもより真剣な顔をした潔子さんがいて、ドキッとした。


「…名前、ありがとね」

『っ、ええ!?どうしたんですか!?急に、そんな…』

「ふふ、言いたくなったの」

『??そうなんですか?じゃあ、私も…潔子さん、大好きです!!』

「あはは、ありがとう、」


よく分からない潔子さんのお礼の言葉。
でも、そんなことどうでもよくて、こうして潔子さんが笑ってくれるだけで嬉しい。
お姉ちゃんはいないけど、もしいたらこんな感じなのかな。

にやける頬を押さえていると、スッと自分の前に差し出された白くて細い手。
えっ、と潔子さんを見るとニッとした笑みが返ってきた。


「帰ろ」

『はい!!』


ギュッと潔子さんの手を握る。
柔らかく笑ってくれる潔子さんとそのまま手を繋いで歩き、結局、離したのは潔子さんとの別れ道だった。


インターハイまで、残り1週間。

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