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28話 月島 が 告白される


インターハイ予選二週間前の昼休み、先生に頼まれた教材を体育倉庫に運んで、近道をして帰ろうと体育館裏を通ろうとしたときだった。


「にゅ、入学して…初めて会ったときから月島くんのこと、ずっと好きで…その…もし、よければ、付き合ってもらえないかな?」


控えめな声は確かに“月島くん”と言った。
そっと二人の死角からそちらを見ると思った通りに金色の髪が見えた。

やっぱりモテるんだな、月島くん。
田中が聞いたら発狂しそう、だなんて思っていると、いつもと変わらない冷静な声が耳に入り込んできた。


「…悪いけど無理」

『あ、あの…好きじゃなくてもいいの!!だから、付き合ってみるだけでも…』

「…他に、他にいるんだ」

『っ!!そ、それって彼女さん、ってこと?』

「…そうじゃないけど、」


「いるんだよね」とさっきより幾分柔らかく聞こえる声に驚いていると、女の子の小さな小さな謝罪の声がした。それからすぐに走り去って行くような音がして、ホッとしたのもつかの間


「覗き見なんて、悪趣味ですね」

『うわ!!つ、月島くん!?』


「ビックリした…」と心臓のあたりを押さえながら月島くんを見ると、明らかに不機嫌そうに細められた眼がこちらを見ていた。


『ご、ごめんね、聞くつもりはなかったんだけど…』

「…別に、いいですけど、」


呆れたようにため息をついた月島くんに苦笑いしながら、さっきの彼の台詞を思い出す。

“いるんだよね”
つまりやっぱり彼も普通の男子高校生だったという事だ。
月島くんの好きな人、いったいどんなコなんだろうと考えていると怪しむような視線を向けられた。


「なにニヤニヤしてるんですか?」

『え!?ウソ!?ニヤニヤしてる!?』

「…先輩って分かりやすいですね」


ふっと少し笑う月島くんに「先輩イジメはんたーい!」と言うと、吹き出された。


「ぶっ、先輩イジメってなんですか?」

『その名の通り、後輩が先輩はイジメることだよ』


「先輩は敬いなさい!」と腰に手をあてて仁王立ちして言うと、ついに爆笑された。


『わ、笑いすぎ!!結構本気で言ってるのに!!』

「あーハイハイ、スミマセンデシタ」


ほとんど謝る気なんてないような謝罪の仕方にむすっとしていると、月島くんの長い腕が伸びてきた。
思わず身構えるとそんな私に笑いながら月島くんは頭に手を置いてきた。


『こ、後輩によしよし…』

「すみません、なんかいい位置に頭があったんで」

『それってチビだって言ってる?』

「まっさかー」


「敬うべき先輩にそんな事言いませんよー」と明らかに意地悪な笑み浮かべながら言われても説得力0。
はぁっとワザとらしくため息をはくと、ポンポンとリズムよく動いていた頭の上にある手が止まった。


「あの音駒の主将と、本当になんでもないんですか?」

『な…急だね、また…。確かに、鉄朗は大事な従兄弟だよ』

「今はまだ、ですか?」


ギョッと目を見開いて月島くんを見ると、ようやく頭が軽くなった。

彼には鉄朗に好きだと言われた事は言ってない。
なのにどうしてこんな事を言うのだろう。

反応に困って視線をウロウロさせていると、「ぷっっ!」と再び吹き出す音。えっと思って月島くんを見ると、ニヤリとした笑みを向けられた。


「先輩、やっぱり分かりやすいですね」

『か、カマかけたの!?』

「さぁ、どうでしょう」


「じゃ、僕はこれで」と背を向けてヒラヒラと手を降る月島くん。
その背中に「そんなんだと好きな子にも嫌われちゃうぞー!」と仕返しとばかりに言ってやると、月島くんの足が止まった。


「…じゃあ、先輩もこんな僕は嫌いですか?」

『え?…いや、嫌いではないけど…』

「それならいいです」

『あっ、ちょ!』


歩いて行ってしまった月島くんを見ながら、いったいあの子は何がしたいのだろう?と首を傾げる。
とりあえず、インターハイが終わったら先輩への態度を教えてあげようと思って意気込んる自分だった。

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