27話 組み合わせ が 決まる
「“これが最後の一球!”常にそう思って喰らいつけ!!そうじゃなきゃ、今疎かにした一球が試合で泣く一球になるぞ!!」
烏養さんの声を聞きながらボールを拾いをする。
ちなみに潔子さんはボール渡しをしている。
コートで汗だくになりながら練習をする皆の姿に自分も頑張ろうと、足元に転がるボールを拾ったとき、「フゴ!」という日向くんの情けない声が聞こえてきた。
『あれ?なに見てるんですか?』
練習も片付けも終えてシューズを脱ごうとした所で、ワラワラと集まる皆が何かを見ているのに気づいた
気になって近づいてみると、「名前先輩!」と顔をあげた日向くんが雑誌を見せてきた。
『月刊バリボー?』
「見てみろ、これ」
眉を寄せた田中が指を指したのは一際大きく乗せられた一人の写真で、思わず「あ、」と声を出してしまった。
『牛島さん…』
「…あの、“ウシワカ”…って?」
「なんだ知らねーのか」
頭にハテナマークを浮かべる日向くんに「日向は“小さな巨人”ばっかだもんな」とスガさんが笑う。
田中がそんな日向くんに牛島さんの説明をしている横で雑誌を見ながら中学のときに会った彼のことを思い出していると、大地さんが牛島さんの写真を見て、「うーん、これぞまさに“エース”って感じだよなァ」と言って旭さんをからかいだした。
それに乗るように田中とスガさんが影山くんをからかっていて、そんなのき気にしていない日向くんはその横で雑誌をじっと見ている。
なんだかなぁ、と苦笑いしていると「コラコラ、白鳥沢だけが強敵じゃねーぞ」と烏養さんが近づいてきた。
それから何やら紙を出して、コーチ的今年の四強を説明する烏養さんの姿に、スガさんや大地さんと一緒に「(ズボラっぽいのに…)」と感動してしまった。
そうこうしてるとパタパタとした足音が聞こえてきた。
「皆 まだ居るー!?」
「「!!!」」
『た、武ちゃん??』
バァーン!と開かれた扉から現れた武ちゃんは汗だくで、焦った様子で走り寄ってきた。
「遅くなってゴメン!会議が長引いちゃって…それで、
出ました!!インターハイ予選の組み合わせ!!!」
「「「!!!」」」
ヒラヒラとおそらく対戦表であろう紙を持ってきて、それを大地さんに渡した武ちゃんは肩で息をしている。
そんな武ちゃんの背中を擦っていると聞こえてきたのは“伊達工”というワード。
『一回戦、勝てば伊達工…』
「ソレだけじゃないですよね
うちのブロックのシードに居るの、青葉城西ですよ」
「ゲッマジかー…」
月島くんの言葉に顔をしかめる田中。
ふっと頭に浮かんだのは、最近よくメールをくれる人の顔だった。
「おい」
『コーチ、』
「さっき言ったこと、忘れて無ぇよな」
「―わかってます」
コーチの言葉に頷いた大地さんは何かを思い出すように少しだけ目を細めてから、真っ直ぐな視線をあげた。
「目の前の一戦、絶対に獲ります」
大地さんの言葉に満足そうに頷いたコーチは「んじゃ、そろそろ帰れよ」と残っている部員たちに声をかけた。
「うぃーす」と挨拶をしながら帰り支度を始める皆の中から大地さんを見つけて声をかけると、「どうした?」と大地さんは柔らかく聞いてくれた。
『…あの、さっき、なんだか懐かしそうな顔をしていたように見えて…』
「ああ、そのことか」
思い出したように笑った大地さんは、さっきのように目を細めるとゆっくりと口を開いた。
「一回戦の相手に中学の時のチームメイトがいるんだよ
『一回戦って…常波ですか?』
「おう、池尻っていうんだけど…多分バレー、続けてると思うんだ」
『じゃあ、やっぱり…』
「当たるんですね…」と少し顔をうつ向かせると、頭の上にポンッと大きな手が乗った。
「…ここに入る話をしたときに言われたよ、「戦うことになったらけちょんけちょんにしてやるからな」って」
『ふふ、けちょんけちょんですか?』
「おう、…戦えばお互い的同士で、もしかしたらやりにくいんんじゃないかって今まで考えてた事もあるよ
けど、いざこうして当たるってなると…なんだかワクワクする気もあるんだ」
「なんでだろうな」と笑う大地さんにちょっとだけホッとして笑みを溢したときところで、スガさんの声が聞こえてきた。
「大地ー名前!帰るぞー!」
『あ、はい!!』
スガさんに手招きされて慌てて体育館を出ようとすると、「苗字、」と後ろから呼び止められた。
『?どうかしましたか?』
「…いや、早くスガのとこに行ってやってくれ、アイツ、お前がないとうるさいからなぁ」
『な、何言ってるんですか!』
もぅ、と頬を膨らませながら大地さんに背を向けてスガさんに追い付くとスガさんの柔らかな笑みを向けられて、途端に顔が熱くなったのだった。
「…早くくっついてくれるといいだが…」
“でなきゃ、俺が貰うぞ?”
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