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26話 菅原 が 送る


前にある友人が彼女が他の男と話していて嫉妬をした、という話を聞いて、「男の嫉妬は醜いぞ?」なんて冗談で言ったことがある。
俺には彼女なんていないし、そのときはソイツの気持ちなんて全く理解できなかったけど、今なら、分かる。










『ス、スガさん!』


グイグイと名前の腕を引きながら歩いていると、校門を出た所で名前を呼ばれた。
それにハッとして、腕をはなして振り替えると困惑した表情の名前と目があった。


『あの、大丈夫ですか?』

「え?」

『なんだか、凄く辛そうな顔をしているので…』


「大丈夫ですか?」ともう一度尋ねてきた名前に苦笑いしてしまう。
それは嫉妬してるからだよ、なんて言えるわけもなく黙っていると、名前の手がソッと俺の頭を撫でた。


『スガさん、辛いことがあるなら言ってください。私で力になれるなら、なんでもします』


フンワリと音が付きそうな程、穏やかに笑う名前。
ああ、なんて情けないんだろう、これじゃ旭を笑えないな、と内心自嘲気味に笑いながら、ようやく口を開いた。


「じゃあ、1ついいか?」

『はい、』

「…抱きしめていい?」


返事を聞く前に、「え?」と言う顔をした名前をそのまま自分の中におさめると、ようやく状況を理解したのか、慌てたような声が聞こえてきた。


『あ、あの、す、スガさん!?』

「…ごめんな、俺、思ってた以上にガキみたいだ」


情けないよ、と言いながら更に腕に力を入れると、行き場を失っていた名前の手が遠慮がちに俺の背中に回されて、ビックリした。
「…名前…?」と腕に力を少し緩めて彼女を見ると、優しく細められた目が俺をみつめた。


『…高校生なんて、まだまだ子供です』

「…そうかな?」

『そうですよ!だから、別にガキでいいんじゃないですか?どんなスガさんだろうと、私は好きですよ?』

「…ホントズルいな」


「人の気も知らないで、」と苦笑いしながら、不思議そうに首を傾げた名前に顔を寄せて、コツンと額を合わせると、名前の顔が真っ赤に染まった。


『ス、スガさん、なんか近い…です、』

「近づけてんだから当たり前だろ?」

『いや、それはそうなんですけど…』

「…名前、」


「は、はい」と返事をした声は少し上ずっていて、それに笑いながら更に顔を近づけて、真っ赤な唇の隣にチュッと音を立てて吸い付いた。


『!!??な!なにして!!』

「ん、ご馳走さま」


ボンっと爆発してしまうんじゃないかというくらい、顔を真っ赤にした名前から離れて、自分でも分かるくらい意地悪く笑う。

ああ、やっぱり自分はガキだな、とさっきキスした唇のはしを見て、また苦笑いをこぼす。

そんな俺の気など知らない名前は口をパクパクとさせた後「どうして、」と恐る恐る唇を動かした。


「…消毒?かな」

『え?しょ、消毒ってなんの…』

「…それに気づかない辺り、名前は俺よりも子供だなあ」

『か、からかわないで下さい!!それより、ちゃんと説明を…!』

「…嫌だった?」


眉を下げて尋ねると、今まで開かれていた口がぎゅっと閉まった。


『い、嫌というか…驚きが強くて…よく、分かんないです…』

「あはは、そりゃそうか、…じゃあさ」


「もっかい、今度はこっちにしてみよっか?」と人差し指を柔らかな唇に押し当てて言うと、少しひいていた熱が再び上がってきたのか、また頬を染めた名前は「だ、大丈夫です!!」と凄い勢いで首をふった。

そんな彼女も可愛いと思って笑っていると、名前が「あの、」とおずおずと口を開いた。


『…結局、なんだったんですか…?』

「…また今度言うよ」

『えっ、あっ!ちょ、スガさん!?』


先に歩き出した俺を「待ってください!」と追いかけてくる名前。

こうして近くにいれる分、俺の方が有利なのかもな、なんて思いながら、追い付いてきた彼女の手を握ると、無意識なのかなんなのか、小さく握り返されて、さっきキスされた事を忘れてるんじゃないかと思わせる危機感のなさにため息が出そうになったのだった。

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