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19話 田中と西谷 が 送る


「ささ!潔子さん!!帰りましょう!!」

「道中は俺らが命にかえてもお守りします!!」

『…潔子さん、行きましょうか』

「分かった」

「「ガン無視も素敵だ…!」」









今日の送り当番は田中と西谷ということで、帰りの準備を始めた頃から潔子さん、潔子さん、物凄くうるさい。
そりゃあ、憧れの潔子さんと一緒に帰れるなんて二人にしては夢のようなことなのだろうが、悪いけどコイツらに潔子さんは任せられない、
ということで、今私は潔子さんと手を握って歩いて田中とノヤに仲の良さを絶賛アピール中だ。


「じゃあ、私はここで」

『あ、はい!…あの潔子さん、手繋ぐのいやじゃありませんでしたか??』

「ふふ、妹がいたらこんな感じかなって思えて楽しかったよ」


「じゃあね、」と手を降って背中を向けた潔子さん、隣で潔子さんに敬礼している田中達と思わず同じことをしてしまいそうになるくらい、潔子さんの笑顔は素敵だった。


『潔子さんって本当に女神だよねー』

「馬鹿!当たり前だろーが!」

「潔子さんは俺らの勝利の女神なんだよ!」


潔子さんと別れた後も、結局話題は彼女のこと。

本当にこの二人は潔子さんが大好きだなー、と感心して笑ってしまうと、田中とノヤが不思議そうに首を傾げた。


「何笑ってんだ?」

『だって、田中もノヤも潔子さんが…ていうより、3年生が好き好きーってオーラが出過ぎてて、なんか…』

「「なんか?」」

『…ふふ、可愛い、』

「「なっっっ!」」


進んでいた足をとめてまるで固まってしまったような田中とノヤ。
もしかして、男の子に可愛いは禁句だっただろうか、と二人の顔を覗き込むと


『…ふふふ、』


二人とも同じ表情で真っ赤になって固まっていた。
なんだ、やっぱり可愛い所もあるじゃないか、と二人に笑いかけると、はっとしたように意識を取り戻した二人が慌てたように声をあげた。


「ばっ!か、か、か、可愛いなんて嬉しくねぇよ!」

「そ、そうだ!男に可愛いなんて言ってんじゃねぇよ!!」

『はいはい、』


真っ赤な顔で言われても全く説得力はないので、テキトーに相づちを打って、ギャーギャーと騒ぐ二人の間に入ると、騒いでいた二人が急に怪訝そうに眉を寄せた。

両サイドから私を見てくる二人に、それぞれ笑顔を見せてみせると、二人は不思議そうに目をあわせた。


『おりゃ!』

「な!?」

「名前!?」


顔を見合わせたままの二人の腕をそれぞれ自分の腕でホールドすると、さっきよりも真っ赤な顔が近くなった。


「ばばばばばばばバカヤロおおおおおお!?は、離せ!!」

「そそそそそそうだ!!な、なんかちけぇぞ!」


吃りながら抗議をしてくる二人を無視して、そのままの格好で足を進めると、自然と二人も歩き始める。
本当に嫌なら、腕を引き抜くことだってできるのだから、ある種の照れ隠しだろうと、二人の言葉は無視することにした。


『…ねぇ、田中、ノヤ』

「な、なんだよ!?いいから、腕を!」

『県で一番になろうね』


ニッと笑って二人を見つめると、顔を真っ赤にした二人がポカーンと口を開けたまま固まった。


『それから、全国大会に出て勝って、勝って、勝ちまくって、…三年生といっぱいいっぱいバレーしようね』


「ね?」と同意を求めるように声をかけると、二人は顔を見合わせてふっと笑みを漏らした。


「ったりめーだ!」

「先輩たちを手ぶらで引退させるかよ!」


「「よっしゃあああああああ!!やるぞおおおおお!!」」と勢いよく叫ぶ左右の二人に笑みを溢してから、私も同じように大きく声をあげるのだった。

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