17話 清水 に 相談
合宿3日目
鉄朗と一緒に家を出て、別れた所で声をかけられた。
「名前」
『あ!潔子さん!!』
「おはようございます!」と挨拶をすると、相も変わらず美しい微笑みが帰ってきて思わず顔がにやけてしまう。
こんなに綺麗な人に毎日毎日会えるなんて、最高だな、鉄朗も潔子さんを見たら、私なんかそっちのけで惹かれてしまうんじゃないかな、
とそこまで考えた所ではっとして、昨日のことが脳裏に過った。
そんな私を不思議に思ったのか、潔子さんの柔らかな声が耳に入る。
「…大丈夫?」
『え!?』
「なんだか、赤い、」
『ええ!?う、うそ!?』
パタパタと顔を手で仰いで顔の熱を冷まそうとしていると、隣で潔子さんが意味深な笑みを浮かべているのに気づいた。
「…影山となんかあった?」
『か、影山くん?』
どうしてここで彼の名前が出てくるのだろう?と首を傾げてみせると、潔子さんは一瞬きょとんとしたような顔をした。
「…違うんだ、」
『影山くんとは何もないですけど…』
「“とは”?」
『あ、いや…その…』
しまった、墓穴を掘ってしまった。
ニヤニヤとしながら見てくる潔子さんに居心地が悪くなり、顔を俯かせて、「相談してみようか」という考えが浮かんだ所でゆっくりと顔をあげてみた。
『…あの、潔子さん、』
「なに?」
『…あの、その…今まで、その…』
言葉は濁しながらも足は進んでいるせいか、いつのまにか学校に着いていた。
校門をくぐった所で足をとめると、潔子さんも合わせるように止まってくれた。
『…今まで、兄みたいに思っていた人に、好きだと言われたら、潔子さんならどうしますか?』
ギョットしたように見開かれた潔子さんの目。
そんな瞳から目をそらさずに真っ直ぐに見ていると、潔子さんはふっと柔らかく微笑んだ。
「名前の、思っている事を素直に伝えられる所、私は好き」
『え?』
「相手の人にも、思っている事、そのまま伝えたらいいと思う」
「きっと、分かってくれる、」そう言って優しい手つきで頭を撫でてくれる潔子さんに視界が歪んで、「きよこさん!!」と抱きつくと、潔子さんも柔らかく抱きしめ返してくれた。
するとそこに合宿所からきた皆が現れて、田中とノヤの手によって潔子さんから引き剥がされたのだった。
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