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16話 黒尾 が 伝える


「オカエリ」

『な、なんで私の部屋にいるの?』


影山くんに送ってもらった私をまず始めに出迎えたのは鉄朗だった。
てっきり下でお母さんたちといると思ってたので、驚いたような反応にすると、鉄朗が眉を寄せた。


「…さっきさ、」

『ん?』

「なんか遅いと思って迎えに行ったんだよ、お前のこと」

『え?』


鉄朗の言葉に思わず目を見開くと、鉄朗はどこか怒った顔で私を見ていた。


「…さっきの男、誰?」

『さっきのって…うわ!』


鉄朗の質問に答えようと口を開きかけたとき、ふいに腕を捕まれたかと思うとそのまま姿勢を崩された。
グルンと回った視界に入ったのは天井と鉄朗の顔。


『え!?ちょ、て、鉄朗!?』

「…彼氏なのか、」

『ちが!ちょ!…っ、ん、』


どうしてそんなに怒っているのか分からない。

とりあえず、変な誤解を解こうとたとき、
唇に柔らかいものが押し付けられているのに気づいた。


『ん…ふ、はっ、て…っろぅ』

「ん、ちゅっ…っはぁ」


鉄朗にキスされている、それに気づくと一気に顔に熱が集まった。
慌ててずっと大きな体を押し返そうとするけど、すぐにその手も捕まれてベッドに縫われてしまった。


「ん、…ちゅっ」

『ん、やっ!やめっん、』


啄むようなキスを繰り返していた鉄朗は器用にもそれを続けたまま、制服の中に手を入れてきた。
どうすればいいのか、と思考を回していると、鉄朗の手が這うように直に肌を撫でる。


『や、やだ!!やめて!!』

「…」


いつの間にかキスをやめていた鉄朗は首筋に顔を埋めいて、そんな彼に声をあげるけど、なんの反応も返ってこない。
だんだんと怖くなって、ジワリと目の奥から何かが溢れてきた。


『っ、』

「…名前?」


声をあげなくなったことを不思議に思ったのか、鉄朗は顔をあげると、泣いている私を見て、驚いた顔をした。
そのあとすぐに、上から退くと小さな声で「わるい…」と謝ってきた。


「…お前が他のヤツに盗られるくらいならいっそ、なんて…最低だよな、」


フッ、と自嘲気味に笑ってから鉄朗は立ち上がって私を真剣な顔で見つめてきた。


「俺は、ずっとお前が好きだったよ」

『え、』

「悪いが、諦めてくれって言われても諦めてやれねえ。…彼氏がいるにしてもだ。」


じっと見てくる鉄朗に「ちょっと待って、」と言うと、不満そうに「なんだよ?」と返ってきた。


『…さっきから、なんか、誤解してる、』

「誤解?」

『送ってくれたのは、彼氏じゃなくて後輩』

「…は?」


ポカーンと口を開けて間の抜けた声を出した鉄朗。
ため息をついてから、鉄朗を睨むと気まずそうな声が返ってきた。


「…彼氏、じゃねえの?」

『…違うってば』

「マジかよ…。いや、そのよ、悪かったな早とちりして」


ガシガシと頭をかいて目線を反らした鉄朗は、そのあとすぐに「でも、」と力強く続けた。


「お前のこと、好きなのはマジだからな」

『なっ』

「彼氏いないんならちょうどいい
俺がなってやろうか?」

『け、結構です!!』


ニヤニヤとしてそんなことを言ってくる鉄朗こ声をあげて、「着替えるから出てって!」と背中を押すと「手伝ってやろうか?」なんてふざけた事を言ってきたので、鳩尾にパンチをしてやった。

それから、鉄朗が出ていったのを確認して着替えを始めると、ふとさっきの事が頭を過る。

“俺は、ずっとお前が好きだったよ”
“お前のこと、好きなのはマジだからな”

そっと唇を指で触るとボッと顔に熱が集まる。
ファーストキスはレモンの味、なんて真っ赤なウソだと、その日私は初めて知ったのだった。

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