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12話 月島 が 送る


少しすると、潔子さんの家についてしまって、潔子さんは珍しくクスクスと笑いながら私達と別れた。
なんであんなに笑っているのか分からなくて、とりあえず、月島くんを見ると罰が悪そうな顔をしていた。


「行きますよ」

『え、』


そんな月島くんの顔をボーッと見ていると、月島くんはまた腕を引き出した。
でも、そのスピードはさっきよりもゆっくりとしていて、自然と月島くんの横に並ぶような形になった。


『…ごめんね、月島くん。わざわざ送ってもらって…』

「別に…」


「平気です」と言った月島くんは一度もこちらを見向きもしない。何か会話はないかと探して、空に目を向けると。


『わあ…』

「?」


思わず足を止めてしまった。
そんな私に、もちろん腕を掴んでいた月島くんも足を止めた。


「なんですか?」

『ほら、月島くん、あれ』


指をさして月島くんの視線を誘導すると、私が足を止めた理由に気づいた月島くんは小さく「あ、」と声を漏らした。


『月…綺麗、』


夜空に輝く満月を見ながら呟いてみたけれど、月島くんは何も返してこない。
もしかしたら迷惑だったかな、と彼の顔を盗み見ると、月島くんはじっと空を見上げていた。


『…月島くんて…』

「?なんですか?」

『月、みたいだね』


空を見つめたままそういうと、月島くんから「は?」という声が聞こえた。


『日向くんや影山くんを太陽っていうなら、月島くんは月みたいだなって思ったの』

「…それは、僕があいつらに比べたら霞んでるからですか?」


はっ、と自嘲気味に笑う月島くん。
月から視線をはずして隣の月島くんを見ると、どこか冷めた目と視線があった。


『違うよ、そうじゃなくて。確かに月って太陽みたいにきらびやかじゃないけど、それでも、なくてはならない存在じゃない?』

「…そうですかね?」

『そうだよ。太陽にはない良さが、月にはある。それって、日向くんや影山くんとは違う、月島くんの良さがあるって事だよね』


目を細めて笑って返すと、月島くんは少しだけ目を見開いた。
そんな彼に「ね?」ともう一度同意を求めてみると、驚きの表情が段々と赤く染まっていく。


『月島くん?』

「…行きますよ、」

『え、ちょ、ま、』


またもグイグイと歩き出した月島くん。
何をそんなに怒っているのかよく分からなくて、困っていると、


「先輩」

『え?なに?』

「…明日も送ります」


こちらを見ずに言われた言葉に驚きつつもととりあえず怒っているのではないと分かってほっとしながら、可愛い後輩の提案に笑顔で頷いたのだった。

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