11話 合宿 が 始まる
5月2日
いつも通りに授業を受けて、さあ学校は終わりだとチャイムが鳴る。
「名前!!行くぞ!!」
『はいはい、』
目を輝かせて急かしてくる田中に苦笑いしながら荷物を持つ。
今から、合宿が始まるのだ。
「勝つためにやることは一つ、練習、練習、練習。
ゲロ吐いてもボールは拾え」
コーチの言葉通り、練習は主にレシーブ中心のもので、皆汗だくになりながら頑張っている。
『凄いなー…』
試合形式の練習をしてる横で呟くと、隣で潔子さんがクスリと笑った。
「私たちも、頑張らなきゃね」
『はい!』
できることをしよう、
そう思って潔子さんに笑顔を向けると、潔子さんも柔らかく笑って微笑み返してくれた。
「うおおおっ初めて来たっ」
キラキラと目を輝かせた日向くんの視線の先には烏野高校合宿所。
『1年ぶりだね』
「ん?そういやそうか?」
隣にいた田中に問いかけると、田中は「なんかそんな感じしねぇなぁ、」と笑った。
「お、俺、な、中見てきます!!」
「うおおお!」と言って走り出した日向くんは凄い勢いでいろんな所を見て回りだした。
可愛いなぁ、なんて考えているといつの間にか隣に来ていたスガさんがクスリと笑った。
「可愛いな、」
『はい、日向くんて可愛いですよね』
「いや、日向も可愛いけど、…俺が言ったのは、そんな日向を見て笑ってる名前のこと、」
『え、』
ギョッとしてスガさんを見ると、ニット笑ったスガさんと目があって、お世辞とはわかっていても気恥ずかしくなった。
そんな私の反応を見て、また笑うスガさんに反応に困っていると。
「名前、準備、」
『あ、は、はい!』
と潔子さんが助け船を出してくれたので、スガさんに一礼して潔子さんに駆け寄った。
「うめえええええ!」
「おかわり!!」
美味しそうにご飯を平らげる部員たちを横目に私と潔子さんは帰りの準備を初めていると、おかわりをつぎに来た影山くんが「あれ?」と近寄ってきた。
「苗字先輩も帰るんですか?」
『うん、まぁ』
「お、そういや苗字、
お前、家こっからどれくらいだ?」
思い出したように聞いてきたコーチに「15分くらいです」と答えると、影山くんが「えっ」と声をあげた。
「…一人でっすか?」
『途中まで潔子さんと一緒だよ?』
「つっても、清水は歩いて五分だろ」
「危ねぇなぁ」とため息をついたコーチに大丈夫ですとかえそうとしたときだった。
「送っていきます」
『つ、月島くん?』
ガタリと椅子を引いて立ち上がった月島くんの言葉にその場にいた全員が驚いた。
まさか月島くんが、そんなこと言うなんて…。
戸惑いがちに潔子さんを見ると、潔子さんは面白いものを見つけたように笑って。
「送ってもらいなさい」
と言ったので、月島くんに断るに断れなくなった。
「月島、頼めるか?」
「はい、」
「ちょ、ちょっと待て、だったら俺が…」
「影山、お前は食い終わってないだろ、」
「う、で、でも…」と恨めしそうに月島くんを見る影山くんを大地さんがなんとか抑える。
そのスキに月島くんはスタスタと歩いてきて、「それじゃあ、」と言うと私の腕を掴んで歩き出した。
『え、ちょ、月島くん!?』
「…」
名前を読んでもなにも返さないで、ただただ腕を引く月島くんに困って「潔子さーん…!」と頼りの先輩を呼んでみたけれど、潔子さんもただただ面白そうに笑って後ろをついて来るたけだった。
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