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9話 従兄弟 と 電話


『え?泊まりに来るの?』


電話の相手である従兄弟に聞き返すと、「おう、」と短い返事が返ってきた。


『…でも合宿の一貫で来るんでしょ?キャプテンなのにいいの?そんなことして、』

「監督に許可取ったに決まってんだろ。それとも、俺が来るの、そんなに嫌かよ」


「そうじゃないけど、」と返すと、従兄弟は「じゃあ、いいじゃねえか」と笑った。










“宮城で合宿がある”

久しぶりに電話をしてきた従兄弟の言葉は嬉しいものだった。
もうずっと会っていない彼に会えるかもしれないと思うと素直に嬉しかった。
でも、あくまで合宿で来るというのに、わざわざうちに泊まってくれるだなんて、なんだか申し訳ない。
黙っていると、そんなこちらの考えを見抜いた従兄弟はため息をはいた。


「お前が気にすることじゃねえよ。チームの奴らにももう言ってあるし、大丈夫だ」

『…そう?』

「おう、それに俺だってお前に会いたいんだよ」

『…うん、…ありがとう』


電話から聞こえる優しい言葉にお礼を言うと、照れたように「はいはい、」と返された。


『でも、宮城で合宿なんてどうして急に?』

「因縁の相手となんだよ」


「ふーん、」と返したとき、「名前ー、お風呂わいたわよー!」というお母さんの声が聞こえた。


『あ、ごめん、お風呂入らなきゃ、』

「ん?ああ、じゃあ、また連絡いれるわ」


「おばさん達にもよろしくな」と言った従兄弟に返事をしてから電話を置くと、お母さんの怒鳴り声が聞こえる前に早々とお風呂にむかった。









「あいつ、会いたいの意味ぜってぇ分かってねえ」


なんて、従兄弟がため息をついたのはもちろん気づかなかった。

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