7話 西谷 と 買い食い
「名前!」
部活が終わって、さあ帰ろうと校門をくぐったら後ろから自分の名前が聞こえた。
『あれ?西谷?』
振り向いたら、満面の笑みを浮かべた西谷が近づいてきていて、足を止めて西谷を待つとすぐに追い付いてきた。
「アイス、食おうぜ!!」
『え、わ、ちょ、』
いきなり手を取られて引っ張られた、身長は低いくせに引っ張る力は凄く強くて、傾く体をなんとか立て直す。
グイグイと手を握って引っ張る西谷の手は思っていたより骨張った大きな手だった。
「ほらよ!」
『え、あ、ありがと』
コンビニの前で手を離した西谷は中へ入ると凄い早さでアイスを買って出てきた。
『あ、お金、』
「気にすんな!」
にっと歯を見せて笑った西谷にお礼を言うと、西谷はまた手をとって歩き出した。
『… ねえ、西谷』
「ん?」
『なんで私のこと誘ったの?』
「別に田中や縁下でもいいのに、」と公園のベンチでアイスを食べている途中に尋ねると、西谷は少し「んー…」と考えるような顔をしてから、ガブリとアイスに噛みついた。
「名前とアイス食いたかったからな!!」
『…それだけ?』
「おう!それだけだ!」と笑う西谷に苦笑いしつつ自分もアイスにかぶりつく。
隣で西谷も同じようにアイスを頬張っていて、そんな様子をチラリと見て、アイスの棒をもつ手に視線を向けた。
「ん?どうかしたか?」
『…西谷の手ってさ、男の子の手だよね』
「は?」
キョトンとした顔をした西谷。
珍しい表情にふふっと笑って言葉を続ける。
『骨張ってて、あたしよりおっきくて、』
「そうかー?同年代の奴らより小さいぜ?」
『でも、そんな手が烏野バレー部を救うんだよ?』
「凄くカッコいい手だよ」と笑うと、西谷は照れたように笑って「さんきゅ、」と言った。
「名前の手はさっき握ったとき思ったけど、冷たいよな」
『え?そうかな?』
「おう、夏なのに冷えてた」
そんなことはないと思って、「ノヤの手が暑いんじゃないか」と言うとそうじゃないと首をふられた。
「あれだな、」
『うん?』
「名前の心があったかいからだな!!」
屈託のない笑顔でそんなことを言われて、驚いた。
それからだんだんと恥ずかしくなってきて、ふいっと西谷から視線を外すと、西谷が不思議そうに首を傾げた。
「?どうした?」
『う、ううん、その…ありがとね』
お礼を言ってアイスを食べかけのアイスを食べると隣で西谷が笑って頷くのが見えた。
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