4話 日向 が 騒ぐ
部活の休憩中にドリンクを配り終えたとき、ふと、カゴに入ったボールに目がいった。
そっとその中からボールを一つとると、毎日見ているはずなのになんだか妙に重く感じた。
「よ、」
そっとボールを上になげて、そのままトスをすると、懐かしい感触に少しだけ頬がゆるんだ。
「…!?、名前先輩がバレーしてる…」
驚いたように口をあんぐり開けてこちらを見ている日向くん。
そんな日向くんに田中が歯をみせて笑う。
「そりゃ、できるだろ!あいつも元バレー部だったんだからな」
「おお〜!」
目をキラキラさせて見てくる日向君になんだか気恥ずかしくなって、トスをやめてボールをとると、チョコチョコと日向くんが近づいてきた。
「名前先輩!おれ、先輩がバレーしてる初めて見ました!」
「凄いです!!」と興奮して話しかけてくる日向くんに眉を下げて笑う。
あたしなんか全然凄くない、いや凄くなかった。
「あたしは日向君の方が凄いと思うよ」
「え?」
「日向君と影山君の速攻ってさ、なんか風が吹いたみたいに一瞬のものって感じで」
「見てる方も気持ちいいよ」と言って笑うと、日向くんが照れたように笑った。
「はい!俺も気持ちいいです!!」
『だよね』
「影山のトス打った時、手にズシッとした感覚がするのも、大好きです!」
ピョンピョンと跳ねながら楽しそうにバレーの話をする日向くん。可愛いなあと頬を緩ませていると、「あ!」と思いついたように日向くんが声をあげた。
「今度、苗字さんのトスも打たせて下さいね!」
『え、でも私、セッターじゃ…』
「いいんです!どんなトスでも、俺にとっては有難いトスなんです!それに、苗字さんも、ボール触ってる時、楽しそうですし!」
そんなに分かりやすいだろうか、私。キラキラと目を輝かせる日向くんに、1本くらいならいいかなと頷くと、歯をみせて笑った日向くんは、嬉しそうに飛び跳ねた。
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