わるいおとな
 
その頃からほぼ毎日スカイファイナンスに来るなまえは、その制服に煙草の臭いが染み込んでいた
なんでわかるかっていうと、まあ、ちょくちょく街で遊ぶんだが、その時たまに臭いがする
俺には慣れているもんだけど、彼女や彼女の親、友人はどうなのだろうか
まあここに毎日来ている時点で言ってしまえば友達も多くはないのだろう
『秋山さんっていけない大人ですね』と、言われたりしたように、ほんとうにだめなオッサンだ
彼女より10以上年上なのに、初めて会った時から胸騒ぎが止まらない

『秋山さん』
「え?」
『考え事ですか?』
「あ、いや、なんでもないよ」

すぐに作りなれた笑顔で答える
純粋なようでどこか違う彼女は前を向いた

「今日はどこ行くの?」
『ゲームセンター』
「ゲーセンで何するの?」
『わかんない』

いつもこうして宛もなく神室町を歩く
俺は彼女の家を知らない
彼女の高校もしらない
彼女の通う所から、俺の会社は遠いのだろうか近いのだろうか
もし遠いのであれば、ずっと広い神室町でうろつくのは辛くないのだろうか

「なまえちゃん」
『なに?秋山さん』
「歩くの辛くなったら言ってね」
『わかりました』

彼女は笑顔で答えるが、やっぱり不安だ

『…すいません、どっちかっていうと辛いです』

やっぱり

「じゃあ休もっか」
『えっと…』
「調度俺の会社も近いし、そこで休もう」
『はい』

若い女の子を自分の縄張りに連れてくるなんて、俺もどうかしてるな

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