「鬼畜っス!!」
「ぎゃっ!!」
「……黒子っち、いつからいたんスか?」
「ちょっと前からです」
「ねー、この人今『ぎゃっ!!』って言ったよー。色気無いね〜おもしろ〜」
黒子の登場で急激に心拍数が上がった慈海は、やたらと人の頭をポンポン叩きながら面白がっている紫の彼に構っている余裕など無い。されるがままで大人しく頭をポンポンされている。
長身男子達に詰め寄られるという圧迫感による恐怖ですっかり忘れていたが、そういえば彼等は先程ミニゲームをしていた二年生じゃないかと今更気付いた。
「紫原君、そろそろ嵩原先輩を放してあげて下さい」
「え、この人先輩だったの〜?」
紫原と呼ばれた彼は慈海の頭をポンポン叩くのをやめた。かわりに今度は頭を鷲掴みにし、無理矢理顔を正面に向けてまじまじと見つめられる。
かと思いきや、それもほんの三秒程度で、すぐに興味を無くしたのか「どーでもいーや〜」と言って手を放し、マネージャーらしき女子の所へ歩き去っていった。
「ところで、センパイはここで何してたんスか?」
今度は金髪ピアスの男子が慈海の手にあるデジカメを指差しながら問う。
「あぁ、これは――」
「黄瀬ぇぇえええ!!てめコラァァアアア!!何練習サボってやがんだ、あ゛!?」
突然体育館中にとんでもない大音声が響き渡る。
肩を震わせて後ろを振り返ると、主将の虹村が般若の形相でこちらにやって来るところだった。
背後で身をすくませる気配がする。金髪ピアス君が黄瀬君なのだろう。
「一軍で一番下っ端のお前が練習サボってナンパたぁいい度胸だなオイ」
「え、ちょ、ナンパじゃない!ナンパじゃないっス!!」
見学の許可を取りに行った時とは別人とも言える虹村の剣幕に、矛先が自分に向いている訳ではないがつい慈海も反省の体勢に入る。
そんな慈海の様子に気付いたのか、虹村が苦笑を浮かべた。
「別に嵩原にキレてるわけじゃねぇよ」
「いや、でも、練習の邪魔してしまったので……やっぱり部外者がいると、他の部員の皆さんも気が散りますよね」
「そんな事が気になるような奴は練習に集中していないと見なし練習メニューを増やす」
「鬼畜っス!!」
黄瀬が泣き言を漏らしながら、虹村と一言二言、言葉を交わす。虹村は最後に慈海に「ゆっくりしてけよ」と言って練習に戻っていった。
黄瀬も練習に戻るかと思ったのだが、何故か一緒に虹村を見送っていた。
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区切りがつかなくなった。
2014.01.19
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