額縁の中の世界 | ナノ

(首痛くなりそう)




 黒子君が部活を見学したい旨を主将に伝えてくれたため、千紗が写真部部長ということもあり、写真部の正式な活動として認め特別に見学の許可が下りた。


「嵩原は写真部に入ったのか」

「はい。え、っと……、」


 主将は確か、慈海と同じクラスだったはずだ。たが、まだクラスメイト全員の顔と名前を覚えた訳ではない。

 主将も慈海が言葉に詰まる様子を見て何となく理解したらしく、苦笑いをして「バスケ部主将の虹村修造。宜しく」と自己紹介をした。

「ごめんなさい……」

「いや、こっちからしたらたった一人の転入生だが、そっちからしたら多勢に無勢だしな。仕方ないだろ」

 虹村はそう言って慈海の肩を叩き、「じゃ、練習戻るな」と一言残して練習を再開した。





「…………すごい」

 思わず撮影も忘れて見入ってしまう。

 今はミニゲームの最中で、一軍の三年対二年でゲームをしていた。勿論三年生も凄いのだが、二年生も凄い。千紗が教えてくれた情報によると、今ゲームをしている二年生は皆一年次から一軍にいるらしい。

「……わぁ、」

 慈海はもう一度感嘆の声を漏らし、忘れかけていたカメラに手を伸ばす。

 特に写真に詳しい訳ではないが、慈海は思うままに自分が惹かれた光景をカメラに焼き付け、切り取る。

 夢中になってシャッターを切っている間に、あっという間にミニゲームが終わってしまった。



「あれ、何かカンケー無い人混じってるっぽくないッスか?」

「確かに、見学やマネージャーの募集は一切していない筈なのだよ。黄瀬、お前のせいでな」

「そーそ〜。黄瀬ちんがウルサイのばーっか連れてくるから〜」

「え!?全てにおいて俺のせいッスか!?」



 気付けば近くに千紗がいなくなっていたために探しに行こうとしたら、そんな会話が耳に入った。

 思いの外近くで声が聞こえたので、顔を上げてみると、少年が三人、こちらにやって来るところだった。

 三人が並んでいると、一人がずば抜けて大きいくらいにしか思わなかったのだが……、

(……首痛くなりそう)

 近くに来られると三人が三人、皆長身だった。

 先程の会話からして明らかに「部外者」扱いをされていて、虹村から許可が出ているとはいえ内心焦っているにも関わらず、思考は全く別のところに飛ぶ。確かに焦っているにも関わらず。



「スミマセン、うち見学とかNGなんで。悪いッスけど出てって貰えません?」


 三人の中で(十分大きいけど)一番背の低い男子が声を掛けてきた。いや、声を掛けたというより、忠告というか、注意だろうか。

「えっと、……じゃあ、うちの部長回収したら帰ります」

 三人とも確実に190センチ近く、もしくはそれ以上ある長身なので、威圧感が尋常じゃない。早くこの場から離れたい。


「何か、いつもとちょっとタイプ違くない〜?声かけてすぐ帰るとか、何か拍子抜け〜。別にそれでいいんだけど〜」


 出ていけと言われたから素直に出ていこうとしたにも関わらず、何故かその行動が彼らのうちの一人の興味を引いたらしい。よりによって一番大きい男子だ。見上げると首が痛い。

 一番背の高い男子――紫色の長髪とのんびりした口調が印象的な男子が、思いきり腰を折って漸くといった様子で慈海の顔を覗き込む。

 恐らく二メートルはあるであろう長身男子に無表情でまじまじと見つめられると、恥じらいよりいっそ恐怖を感じる。

 慈海が思わず一歩後ずさると、何故か紫色の彼も一歩近づいてきた。もう一歩下がるも、相手もまたもう一歩詰めてくる。

「紫っち、何してるんスか?」

「ん〜?何かさ〜小動物みたくて面白くない〜?」

「初対面の相手で遊ぶものではないのだよ」





「緑間君の言う通りです」





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やっとキセキ登場。

2014.01.19


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