額縁の中の世界 | ナノ

「そうだ、バスケ部行こう」




「慈海ちゃん、今日は何撮るの?」

「うーん、どうしようかな」


 部活動説明会から一週間が経った今日、慈海は写真部の部室にいた。

 こんな言い方をすると失礼だが、この写真部は帝光中には珍しい、その分野において無名の部だった。つまり、受賞歴などが無い。

 部活動を基本的に愛好会のようなものだと考えてきた慈海は、結果を残すことを第一に考えているような部には馴染めないだろうと感じていた。だから、この写真部を選んだのだ。

 写真部は一度廃部になったのだが、去年、一年生が再び立ち上げたらしい。そのため、部員は全員慈海より年下だった。


「ていうか、本当に敬語とか先輩呼びとかしなくていいの?転入生ったって、慈海ちゃん先輩だよ?」

「いいよ、別に。部活動に関しては私のが後輩みたいなもんだし、あんまり堅苦しいのって好きじゃないし」


 二年で部長の坂下千紗とは、入部してからすぐに親しくなった。千紗はとても明朗で快活な性格で、慈海が入部希望だと言った途端、「え、うそ、入部希望だと!?マジで!?先輩ちょっとマジで!?」と掴み掛かるように問い掛けてきた。とても嬉しそうな声音と表情で。

 聞くところによると、部員がどんどん減っていき、再び廃部の危機に晒されていたようだ。幽霊部員も多いらしい。

「まぁ、慈海ちゃんがいいならいいんだけどさ。私も最初は嬉しい反面、『どうしよう、先輩だ』とか思ってたから心底安心したし」

 「お陰で廃部の危機も乗り越えたしね〜」とのんびりした口調で言いながら、自前のカメラの手入れをする。

 写真部だから一眼レフでも使っているのかと最初は思っていたのだが、案外普通のデジカメを使っていたので、最初は少し驚いた。

 当然と言えば当然で、一眼レフなんて代物は金持ちでもない限り中学生が手に入れられるような物ではないし、立ち上げたばかりで部費もほぼ無い。つまりはあるものを使うしか無いのだ。

 幸い慈海も自宅を探したらわりと新しいデジカメが見つかったので、問題なく部の活動に参加することができた。


「今年のコンクールに出展するのどうしよう〜テーマ浮かばない〜」

「桜は?そろそろ見頃なんじゃない?」

「月並み過ぎてつまんない!」

「……そう」


 暫く椅子の背凭れを前にして座り、項垂れていた千紗が、急にガバッと音がしそうなくらい勢いよく顔を上げた。



「そうだ。バスケ部行こう」





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メインキャラが全然出てこないうちにまさかのオリキャラ投入。

夢主設定細かく考えたら、「あれ、こいつ絶対に自分からバスケ部に関わりに行かねぇよ」とか思ってしまったので。急遽3秒で千紗ちゃんを生みました←

次から少しずつバスケ部員と絡む、はず。多分←


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