――千鶴…約束、しようよ。
(はい、何ですか……?)
(―もしも………)
あの時の約束を貴方は覚えていますか。
―――
「ねえ、千鶴ちゃん」
「……はい?」
放課後の教室。
沖田先輩と帰る約束をしていたけれど、日直だった私は待ってもらって必死に日誌を書いていた。
外からはオレンジ色の夕日が差し込んで教室を照らす。
目の前で肩肘を突いてこちらを見ている沖田先輩の端正な顔立ちを一層愁いだたせていた。
スラリと伸びた綺麗な手足にふわふわな栗色の髪に翡翠色の瞳。
ちらっと見たその姿に一瞬目を奪われた私は何ともいえない気持ちに襲われて。
―まるであの頃の様な……―
(…いけないいけない。早く書き終わらせなくちゃ)
急いで書き始めてあと残り一行という所に指しかかった頃に、そんな時沖田先輩は不意にその言葉を口にしたのだった。
「……千鶴ちゃんって、生まれ変わりって信じる?」
言われドキッとして、思わず持っていたシャープペンを落としそうになった。
「どうしたのそんな驚いた顔をして。
もしかして僕がこんな事言うの意外だった?」
「あ……はい、ちょっと意外だったので吃驚してしまいました」
「何それ。僕だってたまにはフラフラしてない時だってあるよ」
クスクスと少しだけ笑うと、で…どうなの?と話を戻した。
「生まれ変わり……はあるんだと思います。確証はないですけど、胎内の記憶とかも殆どの方は忘れちゃうけど覚えてる人も居たりしますし。
だからあっても不思議ではないんじゃないんでしょうか」
「…へーえ」
沖田先輩……眼を丸くしてる。そんな変なこと言ったかな、私。
「へ、変なこと言ってましたか?」
「……ううん。千鶴ちゃんがそう言うんだったらあるのかもしれないね」
「………」
柔らかく微笑んで私を見つめて。
その姿はあの頃の貴方をダブらせる。
「ほらほら。
日誌を書いちゃおうよ、いつまでたっても帰れないよ?
せっかく新しいケーキ屋見つけたのに寄れなくなっちゃう。千鶴ちゃん、行くでしょ?」
「……!いい、行きますっ早く終わらせます!」
バタバタと書き始める私に優しく笑って。
「そんな焦らなくても大丈夫だよ。頑張って、待ってるから」
――あの時の約束を覚えていないかもしれないけれど。
(輪廻というものがあるならば……来世でもまた千鶴と一緒に居たいな)
覚えてなくてもこうやって再び出逢えて同じ場所で一緒に居れるから。
――だからいいんです。
***
前世の記憶がある千鶴ちゃんと記憶がない沖田さん。
胎内の記憶とかって話は実際に自分ほんのちょっとあったりするので。産まれるちょっと前からのだけですけど。
真っ暗だし、狭いし、何もする事がないので凄い退屈してたのを覚えてます。(笑)
ある時パッと思い出した感じですかね。
なので輪廻転生ってあると思います。
て所から生まれたお話でした。
2012.01/14