アイラビューラビュー
(感謝を込めて8のお題)
なまえはよく、ラブレターを貰う。
そこに書いてあるのは、勿論『好きです』『○○で待ってます』の類いで、そして差出人の名前は大体が……
「あれ、なまえ、また女の子からラブレター?」
「うるさい平助黙れ」
そう、女の子。
女子剣道部で竹刀を振るうなまえの元に来るラブレターは、大体が女の子からの可愛らし〜いお手紙なのだ。
(今、ベタだなぁって思った人。そんなベタな展開でも俺は本気で悩んでんだよ)
男からの告白も少なからずあるらしいけど、その辺の男よりも断然強いなまえは、どうやら夢見る女の子的には王子様のようなイメージにぴったりらしい。
「黙れってさぁ…、なまえひどくない?仮にも俺、なまえの彼氏…」
「なら尚更よ。黙って放っておいて」
なまえの雑なあしらいに、俺は渋々口を閉じる。
なまえはファンシーな封筒から手紙を取り出し、さらりと目を通してまたそれに閉まった。
そんな一連の動作を、俺は何回 目にしただろう。
今の所、告白から俺への別れ話に繋がった事はない。
しかしそんな可能性も、無きにしもあらず…な訳で。
なまえが何処かに行ってしまうのはいやだ、と、奥歯を噛み締める。
そう思う度に、俺はとことんなまえに依存していると思い知らされる。
「……なんで、そんな不安そうな顔してんの?」
女の子から貰ったラブレターを鞄に仕舞いながら、なまえは俺の顔を覗き込んだ。
突然の事に、俺は顔を強張らせる。
不安そう?
ううん、違う。
不安なんだよ。
(本当に、物凄く不安なんだ。)
なまえ、と縋るように腕を伸ばせば、なまえはゆっくりその腕を掴んだ。
「えーと…あぁ本当、平助は馬鹿だわ」
「…ひどくない?」
「全然ひどくなんかないわ…。 あのね平助。私、平助が好きよ」
平助だけが、と呟いてなまえは俺の腕を引いた。
すると必然的に俺は足を踏み出して、それに倣ってなまえも足を踏み出す。
ぐんと近付いた距離に微かにたじろぐと、なまえは少しだけ背伸びをして、
俺の口唇を掠め取った。
「う…ッ、え、なまえ?!」
「朝から辛気臭い顔してないで、もっと笑ってちょうだい。あんたが笑ってないと、調子狂うんだから。」
ね、と笑う彼女は、とても清々しくて、
ラブレターなんて、
どうでも良くなった。
アイラビューラビュー(もちろん、此処が朝の昇降口だって事もどうでも良い!)
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