もっと一緒に(感謝を込めて8のお題)

 


「…かも、たろ……?」


弱々しく僕の名を呼んだなまえは、赤い顔をして床に伏していた。

心配する事はない。
ただの、風邪だ。



「…ごほっ、…うう……かもたろぉおおぅぇ…」

「人の名前を呼びながら吐き気をもよおすな。気分が悪い。」

「うぅ…私も気持ちが悪い…、ごめんなさい、かもたろ…うぇ…」


「はぁ……、もうイイから、ちゃんと寝てろ、いや、寝ろ」



ぐっと力を込めて言うと、なまえは渋々布団を肩の上まで引き上げた。
頬を膨らませたなまえに、僕はその布団をポン、と叩いてやる。


「! 今、胸触ったよ…!かもたろのセクハラぁ」

「は?そんな感触もなかったが?」


「うわぁん誰がまな板だ、誰がペチャパイだ、うわぁぁん」

「被害妄想な上に逆ギレか。忙しいななまえは」


そう鼻で笑うと、なまえはむぅ、と口で言い頬を膨らませた。
歳相応ではないその仕種が可愛らしくて、僕は思わず目をそらす。

(……って、何で顔を背けてるんだ僕は)



ちら、と視線を戻せば、なまえはキョトンとして僕を見つめている。
熱の所為で虚ろなそれは、真っ直ぐに僕を見ているようで、見れてはいない。


「…かも、たろ?」

「うん? どうかしたかい?」


「あ、のね……」


懇願するような眼差しに、ぐらりと理性が傾く。
頭を軽く撫でてやれば、なまえは熱い手でそれに触れた。
微かに震える赤い唇が言葉を紡ぐ。


「どっかに、行っちゃわないでね…。 ずっと私の側に居てね……、お願いだから」



ゆっくりと行われた瞬きの後、なまえは熱い涙を流してそう言った。








(…熱があると弱気になるって、本当なんだな。)

(そ…そうじゃなくてさ…、……鴨太郎のばかぁ…)

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