涙を流す幸福(幸福で5のお題)

 


ぼろぼろと頬を流れる熱い液体。

それは瞳を濡らし、


それから、

それから…、




涙を流す幸福



好きだヨ、と新ちゃんが言った。
それに対して、私も、と笑顔を返す。

幸せ幸せ幸せ幸せ、
それはもう、本当に幸せ。

なのに、何で私の頬は濡れているの?




「まったくもう、嬉し泣き?」

「嬉し泣、き…ッ?」

「人間って、泣くのは悲しい時だけじゃないんだヨ。嬉しい時だって、涙は出てくるモノなんだから」


知らない?と訊ねた新ちゃんに、私は首を縦に振って肯定を示す。
抱きしめてくれる彼の腕に縋るように身を寄せて、それから首に顔をうずめた。
 

「ふは、くすぐったいヨなまえ」

「ら、って、なまえ、新ちゃんの事、好きらもん…っ」

「舌っ足らずになってる…、ホラこっち向いて」


「ンむ、新、ちゃん」


ちゅ、と私の頬に新ちゃんの唇が押し当てられる。
そのまま唇同士が触れ合って、舌が、絡む。


新ちゃんが私に向かって、好きだと愛の言葉を紡いでくれたのは初めての事だった。
だから当然、私の気持ちを新ちゃんに伝えたのだって初めて。

それから、口を吸われたのも初めて。
愛を込めて身体を密着させたのだって、初めてなのだ。

舌を吸われて息が上手く出来ず、私は新ちゃんにもたれ掛かる。


「ぅ、ふあ…ッん」

「ん…初々しいなぁ、なまえはサ」

「だ、ってこんら事、した事ないもん…」


ぼろぼろ、ぼろぼろ。
涙が頬を濡らしていく。

抱き上げられて、その状態で口付けられれば、私の涙は新ちゃんの頬をも濡らしていった。


「ん、はあ…っ」

「なまえ、」

「し、ちゃ…ッ…、新ちゃ…!」


深い口付けと、熱い抱擁。
私の足は地に着かないまま、意外にも力強い新ちゃんの腕の力に驚きながらその名を呼んだ。


泣くのは、哀しい時だけだと思ってた。
今まで私が泣いたのは哀しかった時だけだからだ。

それが新ちゃんの言葉によって覆された。覆って、くれた。

嬉し泣きという物があるのだと、愛するという気持ちの側に涙があるのだと、教えてくれた彼。

私は新ちゃんの腕に抱かれたまま、涙を流した。


end

そんな幸せの形もあるんです。

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