ヘンゼルとグレーテル

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 包丁を砥ぎながら、グレーテルに声を掛けます。

「グレーテル、竃の火を見てくれないかい? パンを焼くから」
「竃の火なんて、どうやって見たらいいか判らないよ」

 咄嗟にグレーテルは言いました。魔女は肩を落とします。

「どうして。こんなに大きな扉がついてるだろう」

 言いながら、魔女は竃の扉を開けて、身を屈めました。
 今だ、とグレーテルは思い、後ろから魔女の脚にしがみつきました。
 魔女は「!」少し驚きましたが、彼は若く、子供が体当たりしたくらいではふらつきません。

「どうしたの?」
「へ、蛇が。ヘンゼルのところにいるんだ。ヘンゼルが食べられちゃう!」
「なに?」

 ヘンゼルの籠に魔女は近寄ろうとしましたが、グレーテルが脚にしがみついているので動けません。近付かないと、魔女は蛇がいるかどうか見えません。
 仕方なく魔女は呪文を紡ぐと、なんだか黒い塊に見える部分に魔法を飛ばし、クッキーに変えてしまいました。
 ところがそれは蛇ではなく、鍵の部分だったのです。

 ヘンゼルは鍵クッキーを壊すと、あっさりと籠から出て、魔女に近付きました。

「なるほど、そうやって魔法使うんだね。じゃあ口をふさがなきゃ」
「ヘンゼル?!」

 魔女は籠の中にいるはずのヘンゼルの声に驚きましたが、ヘンゼルはにっこり笑うと、傍にあった包丁で魔女のローブを引き裂きました。

 ビリィイ、という音に、魔女の躯が強張ります。

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