ヘンゼルとグレーテル 11 包丁を砥ぎながら、グレーテルに声を掛けます。 「グレーテル、竃の火を見てくれないかい? パンを焼くから」 「竃の火なんて、どうやって見たらいいか判らないよ」 咄嗟にグレーテルは言いました。魔女は肩を落とします。 「どうして。こんなに大きな扉がついてるだろう」 言いながら、魔女は竃の扉を開けて、身を屈めました。 今だ、とグレーテルは思い、後ろから魔女の脚にしがみつきました。 魔女は「!」少し驚きましたが、彼は若く、子供が体当たりしたくらいではふらつきません。 「どうしたの?」 「へ、蛇が。ヘンゼルのところにいるんだ。ヘンゼルが食べられちゃう!」 「なに?」 ヘンゼルの籠に魔女は近寄ろうとしましたが、グレーテルが脚にしがみついているので動けません。近付かないと、魔女は蛇がいるかどうか見えません。 仕方なく魔女は呪文を紡ぐと、なんだか黒い塊に見える部分に魔法を飛ばし、クッキーに変えてしまいました。 ところがそれは蛇ではなく、鍵の部分だったのです。 ヘンゼルは鍵クッキーを壊すと、あっさりと籠から出て、魔女に近付きました。 「なるほど、そうやって魔法使うんだね。じゃあ口をふさがなきゃ」 「ヘンゼル?!」 魔女は籠の中にいるはずのヘンゼルの声に驚きましたが、ヘンゼルはにっこり笑うと、傍にあった包丁で魔女のローブを引き裂きました。 ビリィイ、という音に、魔女の躯が強張ります。 [*前] | [次#] 『淫行童話』目次へ / 品書へ |