ヘンゼルとグレーテル 10 「どうして? 昨日は優しかったのに、どうしていきなり、そんな」 かぁ、と頬を赤らめるグレーテルでしたが、魔女は目が悪かったので、そんな彼の様子には気付きません。 にっこりと微笑むと、グレーテルの頭を撫でました。 「だって、私は魔女だから。君達に食事をふるまってあげたでしょう? 私も、食べないとね。弱肉強食だよ」 「弱肉」 「強食」 魔女の台詞を繰り返すと、兄妹はにんまりと笑いました。 それからしばらく、グレーテルはご馳走を作り、3人でそれを食べました。毎朝魔女はヘンゼルの腕を確認しましたが、その度にヘンゼルは鳥の骨を差し出します。 「おやおや、全然肥らないね。ちゃんと食べてるの?」 目の悪い魔女はそれを疑わず、ヘンゼルは食べられずに済みました。 けれど、やはり限界はあります。 ある日、魔女は言いました。 「これ以上養ってる場合でもないし、仕方ない。痩せてるけど、もう君を食べよう」 びっくりしたのはヘンゼルとグレーテルです。 「で、デブ専が痩せててもいいなんて!」 「よっぽど溜まってるんだよ!」 大騒ぎするふたりに構わず、魔女はヘンゼルを料理するための準備を始めました。 [*前] | [次#] 『淫行童話』目次へ / 品書へ |