ヘンゼルとグレーテル

07



「ッ?!」

 そこには、自分の子供達に絶頂させられ、蜜を放った自分の妻を見下ろす父が立っていました。
 かあぁっとまま母の頬が真っ赤に染まります。

「ぁっ、あのっ、こ、これはッ!」

 言い訳しようにも、白い蜜はしっかりと子供達の顔についたままです。手首も頭上で縛られています。
 父はゆっくりとヘンゼルとグレーテルに近付くと、おもむろに抱き上げました。

「お前達は、もう寝なさい」

 「えー!」と抗議の声を上げるふたりに構わず、父はヘンゼルとグレーテルを寝室へ放り込みました。

 それからすぐ「ぁっ、ゃ、…やだ、やめてぇ…っ」というまま母の切ない声が聞こえてきて、兄妹は顔を見合わせました。


「…大人ってずるいね」
「ね」


+++


 次の日の朝早く、ヘンゼルとグレーテルは父に起こされ、再び森へ連れて行かれました。

 あんまり急なことだったので、ヘンゼルも白い小石を用意することが出来ません。
 仕方なく、お昼のお弁当にともらった堅いパンをちぎっては落として歩きました。

 けれど、おなかの空いたふたりはまた野苺に夢中になって父を見失い、夜になる前にパンを探しましたが、ひとつも見つかりません。
 パンは、小鳥達がみんな食べてしまったのです。

「どうしようか、ヘンゼル…」
「とりあえず、歩いてみよう」

 グレーテルのパンはお昼にふたりで分けてしまったので、ここにいてもおなかが空くだけです。

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