ヘンゼルとグレーテル

02


 ヘンゼルとグレーテルは、年齢の割に早熟で、性欲を持て余しているようです。
 しかし、ふたりとも『男役』がしたいが故に、ふたりでコトに及んだことはありません。

 ヘンゼルはごまかすように、グレーテルの柔らかな唇に吸いつきました。
 また、ふたりの性欲が募る一方なのには、もうひとつ理由があります。

「こらっ! またそんなことして!」

 広間にやってきたまま母が大きな声を出したので、ヘンゼルとグレーテルはびっくりして離れました。

 ヘンゼルもグレーテルも男の子で、しかも本当の兄妹なので、キスをしているといつも、まま母に怒られてしまうのです。

「兄妹でそんなことしちゃいけませんって、言ってるだろ?」

 本当のお母さんが亡くなって、しばらくしてから来たこのまま母は、容姿のとても美しいひとでした。
 だから、ヘンゼルもグレーテルも、決して彼を嫌いではないのですが、口煩いところは少し苦手でした。

「ごめんなさい、お義母さん」
「ごめんなさい」

素直に謝ったふたりですが、前科が多過ぎるので、まま母は渋い顔です。

「…もう靴下はいいから、出掛ける用意をしておいで。野苺を摘みに行くよ」

 そう言い残すと、さっさと広間から出て行ってしまいました。
 さて、その後ろ姿が見えなくなると、グレーテルは青い顔でヘンゼルの肩を掴みます。

「大変だよヘンゼル。僕ら遂に、捨てられちゃうんだ」

 何日か前に、父とまま母が、野苺を摘みに行くふりをして、ヘンゼルとグレーテルを森に置き去りにしようと相談しているのを、ふたりは聞いていたのです。
 口減らしと言って、悲しいことにこの時代、とてもよくあることでした。

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