02


 木築が麻倉の背後に回り、今井に見せつけるみたいに大きな掌が麻倉の顎を掴み、耳にぬちゅ…と舌を挿し込んだ。

「ひっ!?」

「…麻倉。お前が二度と俺達を追えねェように刻みつけろとの命令だ」

「く、ぅ…」
「せん、ぱい…、お前ッ、木築! これ以上罪を重ねるなッ!」

 熱い今井がお決まりの文句を本気で叫ぶが、木築は構わず耳を舐め、吸い、噛む。

「っ、く…っ」
「お前が抵抗したら、あの五月蠅い後輩にうちの商品を味わってもらう」
「ッ!? ふざけるな、他人の人生をなんだと…!」

 低い声が濡れた耳の内側を震わせる。麻倉の激昂は、見事に木築の口の中に吸い込まれた。


「ん゙ゔっ!!」
「先輩…!」


 唾液が俺の口腔内にたっぷりと流し込まれる。長い舌が逃げる舌に絡みついてきて、擦りつけられる。 

 木築の手が、ゆっくりと麻倉のシャツのボタンを外していく。
 闇雲に暴れるがどうしようもなく、シャツは全て開かれて、スラックスからはインナーもベルトも引き抜かれた。


「細っせェ腰だな」
「うっせ…!」


 骨格の問題だ。気にしている事をしみじみと言われて麻倉は奥歯を噛み締める。そんな場合ではないと言うのに。


「先輩になにをする気だ…!」

 馬鹿、聞くな。聞きたくない。


 今井の台詞に、鬱陶しそうに木築は前髪を掻き上げた。今井を振り返り、ちらと麻倉を見下ろし、くいと顎で今井を示す。

「あいつは馬鹿か?」
「…うるせぇ…」

 さすがに強く返せない。激しいキスをしながら衣服を乱されて、さすがに先が読めないほどウブではない。刻みつけろとはそういう意味だろう。

「…俺ひとりが追えなくなったところで、4課はなにも変わらねぇぞ」
「だから下らねェっつッたろ」
「あー…」

 木築自身は無駄だと知りつつもせざるを得ないと言う事だ。

「組織ってのぁ難儀だな」
「お前らが言うな。…慌てねェな、まさかソッチの趣味か?」
「…、別の方法を考えないとな?」

 そんな趣味はもちろん、ない。完全な虚勢で笑って見せる麻倉を見透かしたか、また木築が歯を見せて笑った。

 大きな掌がするりとインナーの内側に潜って来る。腹を撫でて、胸に這い上がって来る。
 ぞわッ、と鳥肌が立った。
「ッ、」


「まあ、命令は遂行しつつ考えるとしよう」


 ちッ! 麻倉は胸中で盛大に舌打ちした。

 背後から腕を回されているから、インナーの下から肌が覗く。逮捕すべき相手に素肌を撫で回されている姿を、後輩にまじまじと観察されている。

「お前! 木築! やめろ!」
「っ…ぅ、見るな…」

 耳が熱くなる。ちくしょう、どうして、こんな。


「ッん、」
 きゅッ、と乳首を抓まれて、思わず喉が反った。


 目の前にはニヤと笑う木築の顔。くりくりとダイヤルのように容赦なく捏ねられると、悔しい事に自然と乳頭が硬く咎って来た。


「膨らみがなくても愉しめるモンだな」
「ぅっせ、ン゙ん゙っ…!」



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