予行演習は本番エッチ

02


 土曜日、やってきた光琉へ挨拶もそこそこに、俺達は『予行演習』を始めた。

「手を繋いだらキスだな」

 細かいことは全部すっ飛ばす。女子を、というか今後一生俺以外とそんなことを光琉にさせるつもりはないから、詳細なんか必要ない。

「顔近付けて。俺を沢野だと思って」
「はは。カッコいい沢野だなあ」

 ふざけ合いながらも、俺たちは顔を近付ける。ほんの少し、緊張した面持ちの光琉。唇が近付いてくる。
 それだけでイきそうになってる俺の事など知らず、ちゅ、と触れるだけのキスをして、ぱっと光琉が離れる。

「…っへへ、俊彌でも緊張するね」
「慣れろって。ほら、もういっかい」

 俺の部屋の真ん中に突っ立って、高校生男子ふたりで手を繋いで。そしてそっと向き合って、唇を重ねる。何度も、何度も。

 ちゅ、…ちゅ、…ちゅ、…ちゅ、

「んん…なんか照れる」
「じゃ、これ飲んで光琉」

 差し出したのは、栄養ドリンクみたいな小瓶。

「なにこれ?」
「沢野を前にしたドキドキに近くなる薬」
「そんなのあるの!? 俊彌はなんでも知ってるね」

 いいえ、ただの催淫剤です。

 でも似たようなモンだろ、なんて。赤黒ちんこの俺は思いながら、すっかり光琉が飲み切るのを待って、水も飲ませて、そして進めた。

「じゃ、舌入れて」
「えっ!? も、もう?」
「馬鹿、練習しとかないと急に来るぞこういうのは。沢野がすげぇ積極的だったら最初で来るぞ」
「そ、そうなの…」

 なにかを言い掛けた光琉を遮り、俺は繋いだ手を引いて唇を重ねた。その首筋に逆の手を這わせる。

 柔らかい唇の中心をちろちろと舌先で舐め回すと、次第に少しだけ開いたそこへ一気にねじ込む。


「んぅ…っ」


 うねうねと熱い口内を舌で探り、光琉の縮こまった舌を弄り、絡め、吸い出して嬲る。
 どんどん光琉の吐息が乱れて涎が溢れるのにも構わず、「ほらもっと舌出して」「沢野の舌も吸ってやれよ」と指導していく。

 たかがディープキス。それでも光琉は完全に翻弄されて混乱の極みだった。

 ちゅぱ、と糸を引いて唇を離すと、光琉はぽすりと俺のベッドに座り、あははと口許に垂れた唾液を拭いながら力なく笑った。頬は上気して、目は潤んでいる。

「どうしよ、練習なのに、俊彌とちゅーしてるって思ったらなんか変に緊張する」
「仕方ねぇな」

 想定内だったし、もし光琉がそう言わなくても使おうと思っていた布を取り出す。徐ろに光琉の目を覆い、俺はその耳許に囁く。

「沢野がすげー積極的だった場合を俺がやるから、光琉はちゃんと『沢野』って呼べよ?」
「わ、わー。すごいドキドキする…!」

 こっちのセリフだ。ベッドに媚薬飲んだあとの想い人が目隠しで座ってんだぞ。
 もうボトムスの中で臨戦態勢バッキバキのムスコを宥めつつ、俺は無防備な光琉の頬を撫でた。


「舌入れたらセックスだ」
「んっ…、も、もう…?」


 セックスは本当に好きな人としかしてはいけない。
 そう言い聞かせてきたのは俺だ。


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