only me

04


 …そう。
 そんな感じで、既に4、5回は俺、真島からのオサソイ、蹴ってる。

「お前のことが好きなんだ…抱きたい。みゆき、お前も俺のことが好きだろ…?」

 一番初めのとき、蒼白になって大暴れした俺に、そう言って真島は何度もキスしてきた。その度にゾクゾクして力が抜けて、「あー俺ほんとこいつのこと好きなのかもなー」とは確かに思った。
 だけど無理だ。服脱がされるとか、その段階で既に鳥肌がやばい。チワワかよってくらいに震える。

 さすがにそんな俺に対して、強行手段に出ようって思えなかったみたいで。
 真島は今までずっと、我慢してるわけで。
 横暴だしメチャクチャな奴だけど、我慢してくれてんのを考えると、こいつも俺のことちゃんと好きなんだなーとか思うし、悪いなとは思うけども。

「じゃあみゆきは俺を抱けるか?」
「……………………無理」

 真島は綺麗な顔をしてるけどそれでも男だし、185cmもあるし、当然胸はないし、真島じゃ勃たない。俺ので喘ぐ真島とか、どっちかっつーと絶対見たくない。

「つかお前抱かれるとか平気なのかよ」
「みゆきがそのあと抱かせてくれるなら」
「…ッねェからな!」

 牙を剥く俺に、真島はこれ見よがしに溜息を吐いた。あ、良かったこれ終りの合図だ。

「…仕方ないな」

 首を振る真島に、悪いなとは…やっぱり、思いはするけど。
 ごめんな。マジで無理。
 思った、矢先。

「みゆき。これ嗅いで」
「ンだよ。香水?」

 差し出された小瓶。拒絶した負い目から、素直に従う。…でも、匂い、しない。

「ん? なに? なんか匂いするかァ?」

 すんすん。何度か鼻を鳴らしてみるけど、やっぱり無臭。いや、なんかアルコールっぽい匂いがするか?
 真島、と視線を上げようとしたとき、くらっ、と世界が回った。

「ぁ…?」
「おっと。ほら、もっとよく嗅いで」

 脚がふらついた俺の肩を支えつつ、顔の前にまだ尚、小瓶が差し出される。仕方ないから言われた通りにするが、結果は変わらない。

「なにこれ…酒? なんか俺、嗅いだだけで軽く酔った感じすんだけど…」

 なんかじんわり熱くなってきた気がする。はぁ、と息が漏れる。

「酒じゃない。もっと性質の悪いものだ」
「タチ悪ィもんってなんだよ…」

 もっと抵抗したら良いのに、俺は真島に肩を抱かれたまま、ぼんやりと奴の顔を見上げる。…間違いない。熱い。

「なんかすげーあちぃ…」

 ぽかぽかする、とかそういうレベルじゃなく。カッカするというか。じんじんするというか。
 まだ俺の鼻先に小瓶を突きつけて、真島はにっこり笑った。女子どもが狂喜するあの笑顔。



「催淫剤だからな」




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