only me

02



「さっさと帰れよ生徒会長サマ。こんな現場に居ちゃまずいんだろ」

 しっしと手で追い払う仕草をすると、真島の眉が寄る。

「君もだろう」
「俺だってさっさと帰りてェけどな。オトシマエ付けに来んだよ、そっちが本命」
「コウさーん!」
「おー」

 駆け寄って来る舎弟に軽く手を振って、歩くついでに転がっていたナイフを低木の街路樹の中へと蹴り込んだ。

「わ、斬られたんスか!」
「気にすんな。んで?」

 俺は真島の存在を無視して舎弟と話す。真島のもの言いたげな視線は感じていたが、ナメられたら終りだ、そのまま俺は場を後にした。




 が。案の定、夜にメッセージが来た。


『家に来い』


「…横暴かよ」

 ひとシゴト終えて帰る途中に見るべきもんじゃない。素早く返事を送る。
『断る』

 すぐ返事が来る。
『君に拒否権は無い』

 学校の女子共に見せてやりたい、この文面。絶対見せないが。

『明日も学校なんで』
 真面目ぶってみる。

『これ以上言うなら学校で泣かす』
「っ!」

 逆効果だった。ちくしょう。
 やってみろや、と言いたいところだが、真島は俺を泣かせる方法を知っている。
 舎弟の眼がどこにあるかも判らない学校で泣かされるわけにはいかない。というかその方法を実践されるわけにもいかない。
 俺は結局諦めて真島の家へと向かった。

 真島の両親は大体居ない。真島の姉はもう家を出ているらしいから、大抵真島は独りだ。

「大人しく来たな」
「俺を呼び出しといて無事で居れると思うなよてめェ」
「…へぇ? 今日は覚悟できたわけ? ──みゆき」
「そっ、んッ…」

 玄関先、まだ靴も脱いでないっていうのに、いきなり顎を掬われてキスされた。
 その名前で呼ぶなって、言いたかったのに。女みたいな名前が嫌いで、舎弟達にも『コウ』と呼ばせているのに。


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