only me

01




「お綺麗な顔しやぶッ!?」


 なにか言いかけた馬鹿の腹を、思い切り蹴り飛ばす。
 バランスを崩したところに踏み込んで、拳を握る。

「舌噛んで死にたくなきゃア、歯ァ喰い縛れや…!」

 目を白黒させている奴に、無理な注文。分かってるけど言ってやる俺って優しい。
 全身全霊を籠めた右ストレートは、馬鹿の顔面をがっつり捕らえて振り抜いた。完全に重心が狂ってた馬鹿は、面白いくらいに飛んで転げた。
 てめぇ、と声を荒げて向かってくるもうひとりの馬鹿のノロい腕を左腕で弾く。かすか頬に走った痛みを無視して、右拳を開き軽い鉤爪の形。

「だァら」

 踏み抜く勢いで一歩。同時に突き出した掌底突きは、ものの見事にそいつの顎を捕らえて昏倒させた。

「喋くってんじゃねェぞ死にてェのか、ってな」
「死にてェのか。その台詞、そのまま君にお返ししよう、鷲尾」

 ハッ、と得意げに笑った俺の背後に、静かに低く冷たい声が掛かる。やっべ。

 振り向けば少し離れたところにきっちり学ランを来た眼鏡の男が薄く笑いながら立っていた。その視線は、昏倒してる馬鹿の腕の先、握られたナイフに向けられていて。
 俺の左頬には、ひと筋の切り傷。
 急いで拭うと拳に無様な赤い痕がついた。思った以上に血が出てるようだが傷は浅い。大丈夫だ。気にするようなものじゃない。

「何度。言えば。分かるんだ、君は」
「は。向かって来んだよ、やらなきゃやられんだろーが、生徒会長サマ?」

 ひと言ひと言強調して言う学ラン・真島に、顎を上げて笑って見せる。余裕の表れ──であれば良いのだが、真島の方が純粋に俺より背が高いだけだ。俺だって178cmあるのに、だ。腹立たしい。

 学年主席、眉目秀麗な生徒会長。
 漫画のキャラかよと思うような真島と、絵に描いたような不良の俺、は。

「やるならひとつの傷も付けるな。ひとつの傷でも付けるなら向かって来られないような素行を取れ。君の躯は、俺のものなんだからな」
「…るっせェ、黙れ」


 …つまり、そういうことに、なっている。




- 221 -
[*前] | [次#]

『雑多状況』目次へ / 品書へ


 
 
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -