キスペット。

07


 しかも、放出の快感の余韻に浸る暇もなく、そのままチロチロとワレメばかりを舐められ続けるものだから、海晴の腰はくねり続け、終らない快感に勝手に涙が溢れた。

 少しして、二度目の絶頂を迎えた頃には、海晴の躯はすっかり虚脱してしまった。他人に掌握されて与えられ続ける快感は、『自分』にすら興味がないと全く手入れをして来なかった海晴の躯には強烈に過ぎた。

「時間だ」

 くすと笑って、名残惜しげにたっぷり放射して萎えた性器からようやく知己が口を離す。整わない息、ひくつく躯。それでもなんとか海晴はなるべく急いで衣類を整えた。

「あっありがとう、ございました…」
「うん、こちらこそ」

 急いで後にしたマンション。
 頭は呆然としていて電話を掛けるのを忘れていた所為で、また叔父から連絡が入る羽目になったけれど、なにを言われたか、なにを答えたか、海晴は覚えていなかった。

***

 それからひと月。ふた月。
 知己からの2度目の指名が入ることはなかった。

 叔父には「なんかしでかしたんじゃねぇのか」なんて言われたけれど、曖昧に答えて交わす。しでかしたどころの騒ぎじゃない。

 そもそも、海晴にとってはあんなに執着されるのも初めてだった。
 恐くなかったと言えば嘘になる。
 だから、なのかもしれない。忘れられないまま、3か月目が過ぎようとしていたある日、再び電話が鳴った。

 宅配、時間は最大まで延長、男性ということで1.5倍料金の上客。

 懐かしい気さえするマンションに向かうと、ドアを開けた知己は変わらない穏やかさで海晴を迎えた。

「来てくれないかと思った」
「…仕事、ですから」

 柔らかく喋るあの唇が、海晴の屹立へキスを落とし、そして快楽の体液を飲み込んだ。
 そう思うと、一気にかぁっと体温が上がる。
 もう、3か月も前の話なのに。

「この間は、ごめんね」

 ソファに案内して、知己がコーヒーを出す。

「いえ…俺が、悪いんです。今度は、きちんと最後までお相手しますから」

 それには手を付けず、海晴は告げる。コーヒーを飲んでしまったら、キスが全部カフェインの味になってしまう。別にプロ意識なんてないけれど、海晴自身はそのキスは好きではない。

 「そう…」と知己は感情の読めない声で告げると、そのまま海晴の座るふたり掛けのソファに片膝を乗せた。


「じゃあ、いい? ハル君」



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