キズナ

03


 これ。と言って葵が差し出したのは、ハンディタイプのマッサージャー。強い振動を与えて筋肉をほぐす機械。先端が丸く灰色の、よくあるタイプのものだ。

 そして、少しマニアックなAVを見たことのある人間なら、その間違った使い方をすぐに想起するだろう。
 その卑猥な準性玩具を手にしているのが、風呂上がりで上気した頬の想い人なら、尚更だ。

「今日これ買ってさ、脚とかすっごい良かったんだけど、首とか肩とか背中とか、やっぱり誰かにやってもらった方がさ」
 イイでしょ、とはにかむ葵に、茜の妄想は暴走寸前だ。

「う、うん…」

 電動マッサージ機――略して電マを受け取った茜は、葵の要望に応じて、彼を部屋に招き入れた。

 当然のように、葵が陣取るのは、茜のベッドだ。
 さっきまで、葵をオカズにして自慰に耽っていたベッド。

 くらくらと茜の思考が良くない考えに侵されていく。

 無防備にあっさりシャツを脱ぐと、葵はうつぶせになって組んだ腕の上に顎を乗せた。

「よろしく、茜ー」
「うん…」

 電源のプラグを延長コードに挿して、スイッチを入れる。

 ヴィイイイイ…ッ
「ッ!」

 思いがけず大きな音がして、灰色のアタッチメントが震える。細かくて、強い振動。
 目の前には、葵の白い背中。思わずごくりと喉が鳴った。
 ゆっくりと近付いて、その首に押し当てる。

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