綺麗な花には、

02


 研究員の性としてそこまで冷静に報告をし、惟人は顔を拭って花を見る。白く愛らしい花が変わらずそこにあって、食虫花の一種なのかなぁとか思いながら「お前ぇ、俺食う気かよー」と冗談混じりに告げた、途端。

 ブチブチブチっ! がしゃっ!

「ふぇっ?」

 とんでもない速度で、小さな花から信じられないような質量の数十本の蔦が成長し、掌に収まるほどだった鉢植えの花は、一瞬で惟人よりも巨大なモンスターへと変貌した。

「ぅわあぁあッ!!」

 眼前で繰り広げられた凶悪な進化に、惟人は腰を抜かす。
 鉢植えなど粉々に砕け、それぞれが意思ある生物かのように、数十本の蔦がばらばらにくねり動く。蔦の先からは時折ブシュウとさっきの粘液が迸る。

「なッなッ、なにコレ…っ?! なにコレ教授!!」

 ずるずると尻餅をついたままの状態で後退する惟人に、信じられない言葉がスピーカーから届く。

『素晴らしい! 成功かもしれない。倉田くん、そのままそこで観察を続けてくれないか!』
「はぃい?! いや無理ですよ恐いです恐過ぎま…あっ?!」

 惟人がガラスに向けて抗議している隙に、蔦が惟人の脚を絡め取り、逃げることを叶わなくする。

「はッ、放せよっ!」

 これはもうあの可愛かった花ではない。惟人は蔦を掴んで引き剥がそうとするが、抵抗するかのように別の蔦がブシュッとまた惟人に粘液を浴びせかけ、その所為で手がヌルつき、うまくいかない。
 次第に蔦は惟人の手首や腰にまで巻き付き、完全に動きを押さえられる。



(く、食われる…っ!)




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