勝敗

08



「すぐ、ヨくしてあげますよ…」

 囁いてみても、サリはかぶりを振って涙を流すばかり。
 助けを求めるように壁を掻く指が痛々しい。

「サリっ…!」
 ぐちゅッ、ぐちゅッ
「あっあっあっヤ、ゃ…っだ、…っめ…っ」

 腰を使い揺さぶっても、サリはただ「やめろ」を繰り返した。
 ふたりの間で揺れるサリの牡が力をなくし始めたので、扱き上げる。

「やぁあッ! やめ、やめろ…っ! あっあーさ…っあぁッ、あっ、いや…いやらっ…っあっあっあっ…ぁん…ッ、ぁふ…っぁ…れんか、ぁ…ッ」

 ビク、とアーサーの肩が震えた。

 今、サリは『殿下』と言わなかったか。
 陛下かと思っていたが、殿下だとは。アーサーは数人いる殿下を思い浮かべる。どれも、サリよりアーサーより年下だ。

「どなたなんですかね…こんなに貴方をいやらしくしたのは」
「僕だよ」
「!」

 ギクリと動きが止まった。

 ドアを開け、ひとの情事を堂々と眺めていたのは、

「か、…カイル、殿下…」

 体温が下がる。サリと繋がった場所だけが、嫌に熱い。

「ッ、れんか…っ」

 ヒク、とサリの顔がひきつって、ナカの締め付けがきつくなる。思わずアーサーは小さく呻いた。

 カイルは平然と近付いてきて、サリの頬をそっと撫でる。

「来ないから来てみれば…こんなになって。可哀相に」

 そう呟いてから、カイルはアーサーに振り向く――微笑んで。

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