淫妖奇譚 肆

07



(ぁ…、っ、はぁっ…河童のときのアレと、違う…?)

 胡瓜で菊座の奥のシコリのような場所をぐちゃぐちゃに押し潰されたときのように、白濁を感覚もなく漏らし続けるかと思った。

 けれど、実際はまらは屹立したままで子種は飛ばず、ただまだ続く甘い甘い痺れが無意識に躯をくねらせる。


 『躯』の双葉は快感に心置きなく身を委ねつつも、犬神が子種を法陣に飛ばさせてくれなかったことに恨み言を言っている。聴きたくもない。


(河童…そうだ、河童! 川の神! 聞こえたら来てくれ! 助けてくれ!)


 思い掛けないことから思い出したものだが、それは双葉の魂には棲んでいない、ただし双葉を気に入り手伝ってくれると告げた妖怪。
 現(うつつ)には聞こえないらしい『魂』の声だ。彼に届くかどうかが最後の望みになる。

「犬神…早く…俺とまぐわって…」
(早く来てくれ河童!!)


 事もあろうか、双葉の顔と声で『躯』は四つ這いになり、犬神の脚の間に顔をうずめるようにして、犬神のまらへとちろちろ舌を伸ばし始めた。


(ぁ、ふ…っ、ん、んんっ…)

 なにもしていないはずの、唇を閉ざしているはずの『魂』の双葉の舌先に、普段は毛に埋もれている熱くてつるりとした肉の感覚が届く。獣の匂い。頬を撫でる毛並みの感触。


(ゃだ…ゃだ、な、舐めてる…俺…)


 どくどくと脈打つ竿の感触に、根元の膨らんだ場所、そして先端の…。



「面白いことになってるねぇ」



(ッ河童!!)

 ふよふよと浮く『魂』の双葉の隣、箪笥の上に緑色のその妖怪が言葉通りにやにやと笑いながら曲げた膝に頬杖をついて犬神と『躯』の情事を見下ろす。

(川の神、俺の声聞こえますか!? アレ止められますか!?)

 この来訪は偶然かもしれない。それでも必死で訴える双葉の舌には、じんわりと粘性の苦味が届いて泣きそうになる。

 河童は、ひたと『魂』の双葉と視線を合わせた。


「聞こえるし視えるとも。人間と違って私達は妖で、尚且つ神だからね。私はもちろん、あの狗も一応は神の類だろう。最初から君のことは視えてると思うけど?」

(……は?)
 なんだと?



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