淫妖奇譚 肆

04



「そう…呪い…淫らになる呪い…見て…」


 そうして撫でるように示すのは、『躯』が自ら描いた妖しい下腹の法陣。

「これ…。ここに、俺の子種を振り掛けて塗り込まないと、ずっと、…その…シたくて、疼いて…っ」

 にゅくッ、にゅくッ、にゅくッ、

 『躯』が指の動きを早め、双葉は悶える。


(ぁ、ゃっやめッ…)


「ぁ、ぁっ…お願いだ犬神…いやらしい事、いっぱいしてくれ…ケダモノみたいに犯してまぐわって、俺に子種を漏らさせて…っ」


(馬鹿、言うな…ッ! それなら1人で処理ッ…ぁ、っあ、で、でき、るだ、ろ…!)

 にゅくッにゅくッにゅくッにゅくッ


 犬神への扇情なのか、あるいは『魂』の双葉を黙らせるためなのか、『躯』の双葉は更に深くまで指を菊座に割り挿れては肉壁を捏ね回す。

「最初の時みたいに…、はぁ…っ、ちくびっ…溶けて無くなるほど、舐めてくれ…」
(っ、記憶も、あるのか)

 哀願の台詞はひたすらに『魂』の双葉の脳を茹だらせるばかりだったが、文字通り呪いの体現である『躯』の方は瞳に本気の熱を帯びている。


 とにかく、呪いの成就法は分かった。つまり、忌避する方法も。達し、精子が噴出させられたとしても、あの法陣に掛からぬようにしたら良いのだ。もしかしたら達すのにもまぐわいという段階が必要なのかもしれないが。


 だが。

(…)

 ちらと、双葉は茶色の巨狗を横目で伺った。これでも犬神。力ある妖だ。呪いだと看破する冷静さも持ち合わせている。

 そして何度でも言うが、とんでもない色魔だ。


「つまり精を腹に散らさん程度に遊んでやれば良いのだな」

(違う!! やめろ!!)


 舌舐めずりをして、犬神は『躯』を押し倒した。

「そんな…っ、早く呪いを解いてくれ、こんな…っ恥ずかしい…っ」

 濡れた下布ごと腰を振りながら、頬を染めて『躯』の双葉が求めるが、『魂』の双葉はそれどころではない。


(絶対やめろ!! 離れろ!!)


 無駄だと知りつつも毛皮を掴もうとするが、『魂』ではなにも手にできない。べろりと長い舌が獣の口から垂れて、『躯』の望み通りに既に勃起した乳首へと絡みつけ、弾くように舐め回す。

(あっあぁ…ッ!)


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