淫妖奇譚 肆

03


 にちゃにちゃと下布を己の唾液でしとどに濡らし、その下で双葉の『躯』のまらは少しずつ頭をもたげ、それは『魂』の双葉のそれも同じだった。

 燃え上がるような羞恥に焼かれながら、ヌルヌルと滑りの良くなった乳首を己が撫で回し弾いている姿を見せ付けられている。


(ゃだ…やめ、やめて…っ)


 いっそ、下布を解いてまらをゴシゴシと扱き上げるような自慰行為であったならよほど良かった。だが、男であることをすべて排するような卑猥な自慰だ。

 目が離せればいいのに、離せない。


「はぁん…はあ…っ、犬、神ぃ…」
「どうした双葉、珍しい、」

(嘘、だろ…!)


 『躯』の甘えるような声に応じてずるりと現れた妖に、双葉はただ驚愕に目を開く。

 毛足の長い狗の使役妖怪も、常ならあり得ない媚態を晒し、乳首を自ら弄りながら、大股を開いて濡れて肉棒の色を透かした下布の隙間に指先を挿し込む陰陽師の気配に言葉を呑んだ。

(あ、っあ、嫌…ッ)

 見えなくても『魂』の双葉には分かる。濡れて貼り付いた下布の中、長い指がクニュクニュと菊座の表面を撫で回している。
 双葉が悶えても、部屋の状況はなにも変わらない。

 肉欲に溺れた『躯』の目が舐めるように犬神を見た。


「あ、っあ…いい…、お願いだ、犬神…今俺、…すごくいやらしくて…はしたないこと…したい…」

(ひ、い…! したくない、俺じゃない!)


 下布をずらして、自分の指で『躯』の双葉が菊座を割るのを犬神に見せ付ける。ぞくぞくぞくッ、と背中に痺れが走るのを、『魂』も感じて喘ぐ。


(ぁ、…嫌だ…)

 にゅ、く…にゅ、く…


 己の指が、己の菊座を抽送している。犬神はその姿に釘付けで、『魂』の指にはやわく熟れた肉の感触と、『魂』の菊座には勝手に開かされて閉じる感覚が送り込まれる。


「呪いか…?」
(! そう! そう!)


 あまりの普段との違いに、流石に犬神も違和感しかなかったのだろう。訝るように零した言葉に、『魂』の双葉は喝采を贈りたい気分になった。

 しかし、呪いを掛けた相手はうわ手だった。

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