淫妖奇譚 肆

02


 法術自体に身体へ張り付く、あるいは染み付く効能があるのだろう。描いた陣の墨は垂れることもなく、双葉自身は見たこともない内容だった。読み取ることもできない。

 そうして、なんと。

 『躯』は下布1枚の格好のまま布団の上に戻ると、大きく股を開きながら腰を揺らめかせ、両の手で自らの胸の飾りを捏ね始めたのだ。


(ッん…ぅ…! な、なにを!)


 思わず伸ばした手は、当然『躯』に触れることなくすかっと通り抜けた。

 触ってもいないのに、コリコリと弄られる感覚だけが届き続ける。勝手に息が乱れて、つんッと乳首が勃ち上がり、揺らされる腰によって下布にすりすりとまらが擦れ、もどかしい快感だけが『魂』の双葉にも及んだ。


「はぁ…っ」


 邪気入りの『躯』はまさに邪悪で、『魂』の双葉から己の痴態が見えるようにより大きく股を開き、己の腰の動きで直接まらに触れることなく、下布でささやかながら無視できない刺激で自慰をする。

 しっかり捏ねて勃起させた乳首の先端だけを指先で撫で回し、熱い吐息を零して早朝の爽やかな空気を淫猥なものへと変える。

 もちろん双葉自身、こんな自慰はしたことがない。


(ゃッあ…、や、やめろ、くそ…っ)


 浴衣と同じで、意思のない動きは連動する。ぷくんと色付き始めた『魂』の乳首の先っぽだけが、勝手にふにふにと向きを変えるのが恥ずかしい。

 仕方がない。

 あの色魔に頼るのは癪でしかないが、『魂』の状態では手の打ちようがない。


(犬神!)


 …けれどある程度の予測通り、あの茶色の毛並みの巨狗が棲まうはずの双葉の魂から現れることはなかった。

 にやりと『躯』の双葉が嗤う。
 彼は大きく股を開いたまま躯を折り曲げ、だらりと赤い舌を垂らして見せた。そこからねっとりと唾液が一線引き、白い下布の膨らみへ落ちると、じわぁ、とまらの赤らみをほんの少し透けさせた。

(ッ!)

 ひくんッ、とまらに冷たい感覚が走って、『魂』だと言うのに頬に熱が上がるのが分かった。

「ん…ふ…」

 双葉の顔をした『躯』はにやにやと笑みを浮かべたまま、何度も唾液を口腔に溜めては下布に覆われたまらへと垂らし、そして唇を両の人差し指の腹で撫でると、その唾液つきの指で乳首の先端をゆるゆると撫で始めた。

(ひっぁっ!? ゃ、やめろ…ッ)


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