タチ専が異世界転生したら超堅物ノンケで!?

02


 これまでのクオンは本当に最低限、義務的な処理としかしていなかったが、『達海』としては超絶長期間のオナ禁をさせられていたようなものだ。
 さっさと前を寛げて、空気に晒す。ゆっくり扱く。

(ぁ…やっぱ全然…違う…)

 握ったちんこの長さも硬さもイイトコも、ぴりぴり来る腰や背中に走る快感の感覚も。前の、『達海』のときよりも禁欲的な生活をしているからなのか、息が乱れて体温が上がる。

「んぁ…、ぁ、ふ…」

 たかだか自慰行為だと言うのに、つい声が溢れる。手が、『俺』が、気持ちいーコトを覚えている。

「ぁ…きもち…ん…っ、んぅ…!」

 濃い白濁液が溢れ出て、全身を虚脱感が襲った。紙は貴重だから端切れで処理しつつ、へとへとの躯で着替える。
 『前』はもっと平気だったのに、剣を振るう筋肉と絶頂する筋肉は違うらしい。

「ぁ…は…、は…明日の準備を…しなくては…」

 26年間生きてきたクオンの俺が無意識的に呟く。記憶の混濁があったし、前世のことを思い出しはしたが、俺がクオン・アイリオスであることが変わるわけではない。
 おそらく自慰する機会が増える程度で、なにも変わることはないだろう。


 その考えは、甘過ぎた。


 翌日から同僚の騎士のからだつきを見るだけで、むらむらしてしまうのだ。啼かせたい、喘がせたい。剥いて、しゃぶりついて、突っ込みたい。
 ただそう思うのは『達海』であり、クオンの性癖が変わるわけではないので、いざ近付いてみても情欲は湧かない。無駄に知識だけがある。

(…これは…完全にイカレてしまったのでは…?)

 毎晩頭を抱える日々。

 同僚で妄想しつつも発情はしない。
 自慰はするけどオカズは男じゃ勃たない。

(前世の記憶、邪魔なだけでは…!?)

 そんな悶々とした日々を過ごしていたとある夜。宿舎に居ても仕方ないから、無意識に向かった酒場の扉が開いた途端、たむろしていたアーヴを中心とした同僚の騎士達が目を剥いた。

「えっクオン!?」

 クオン・アイリオスは超堅物であり、これまで同僚からの誘いもすべて断って来た男だ。夜の酒場に顔を出すことも初めてだ。

「たまには、いいかと思って」

 『達海』が勝手に来たなんて言えない。小さく笑う。訓練も勤務も生真面目にやってきたので、嫌われているわけではないらしい。大テーブルへと招かれて、酒も料理も振る舞われた。

 だが『俺』は忘れていた。
 クオンは酒が一滴も飲めないことを。


   §


「ん…ぅ…?」


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