籠絡

02


 ドアが開いて、銀色の髪、灰色の目のサリが、1礼して入る。普段のカタい師団服ではなく、軽装だ。そうするように、カイルが指定した。


「失礼致します、殿下」


 にこりと微笑む。途端、カッとカイルの躯の奥に火が燃え上がった。
 しかし表層は穏やかな笑顔を作る。

「来てくれてありがとう。こないだ、父上と南へ行ったでしょ? その話が聞きたくてさ」
「あぁ。おやすい御用です」

 ソファに促し、座らせる。隣に座ると、驚いた顔をして弾かれるように立ち上がる。

「どうしたの?」
「私は殿下のお隣に並べるような身分ではありません」
「向き合って報告を受けろって? 非公式な面会だし、僕はサリを査問にかけてるわけじゃないんだよ。座って」
「しかし」
「命令したくないよ、僕」
「…判りました」

 心底参ったという顔で、サリが恐々とソファに腰を下ろす。

 手を伸ばせな触れられる距離に、サリがいる。サリの躯がある。既にカイルの躯の熱は表在化している。南の情勢をとつとつと語るサリは、カイルの膨らんだ股間には気付いていないのだろう。サリの話も、カイルには全く耳に入らない。


――だめ、限界…ッ!


 どれほどサリに恋焦がれていたか。待ち望んでいたか。
 手の届く場所にいるのに耐えるなど、できようはずもなかった。

「っ…サリ…ッ!」
「?!」


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