A&D 2

05


 時が経つに連れ、じわぁ…っ、と躯が火照り出し、ウーノは息を吐いてなんとか熱を逃がそうとする。
 もちろん淫らな妄想などはしていないし、していたとしてもこんな奥底から燻るような変化は感じたことがない。

 だとしたら、犯人はあの天使だ。

 以前に描かれた法陣のように、なにか躯自体に働き掛ける『力』を使って行ったのだろう。

「ん、ん…」

 あの色狂い天使が出掛けてどれくらいの時間が経ったのだろう。開きっぱなしの窓の向こうは赤くなり始めたばかりだ。

(夜っていつだよ…)

 この小さく最奥に灯った熱からの苛みに、どれだけ耐えたら良いのだろう。
 膝を抱えて額を付ける。

「…早く帰って来い馬鹿…」

 そんな甘い台詞を、怒りと憎しみしかない声音で呟いた。



   §



「すみませんウーノくん、遅くな──」
「…ッふ…ふ…ッ、ぅ、んゥ…っ」

 扉を開けた途端エディルの目に飛び込んだのは、小さな光の檻の中で蹲って呻きを零す愛しい悪魔の姿だった。
 翼や尾を仕舞う余力すらないらしく、放り出されたそれらがヒクヒクと震えている。

「ウーノくん!?」

 急ぎ駆け寄ると、ひくり、反応した悪魔は涙に濡れた紫の目をエディルへと向けた。

「…ッおま、え、…ッふ、ざけんな…」

 その赤く染まった頬。唇の端から伝う唾液。隠してはいるが擦り合わされる腿の間で屹立した牡。

 欲情、している。
 どうして?

「ッあ! まさか檻の!? し、シス…!」

 思い至るのはそれしかなかった。この術を教えてくれた少年天使の愛らしい笑みを思い出す。


『召喚した後しばらく、檻は狭いまま放置するのがいいよ。そしたら抵抗しなくなるから』


 抵抗しなくなる、というのがこういう意味だとはエディル自身も知らなかった。

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