Mother's Milk

03


 水さえあれば生きられるというガランと違って食べ物もないと弱ってしまうフェイのために、そして森へ行く度に『迷子』になるフェイのために、いつもガランは食事を森の中で調達してきた。

 それは茸であったり木の実であったり、基本的にはそういった菜食だったが、時折野兎のようなものも取ってきてくれる。

 それはありがたいの、だが。
 今フェイが望んでいるのは、そうではない。

「はぁ…」

 穏やかに眠る子供達を、見下ろす。彼らも生きるために仕方のないことで、生きる命に罪はない。だが、今のこの苦痛。そして少なくとも将来的に3人の人間が、同じ苦痛を味わうことになるのだろう。

「別のモンじゃ、ダメなのかよ…」

 小さく呟いて、やることもないためにフェイはぼんやりとガランを待った。



 しばらくして戻ってきたガランは、両手いっぱいに見たこともない真っ赤な果実を持って来た。
 見るからに水々しいそれを、ガランは満面の笑みでフェイに差し出す。

「はいっ、フェイ!」
「…ありがとう…」

 とりあえずは受け取って口に運ぶ。
 甘い香りとほどよい酸味が広がって、フェイはほっとする。こんな生活では、食べることだけが唯一の娯楽だ。

 猟師として日々歩き回っていたフェイにとって、牛のように繋がれた生活は信じられないものだが、ひと度『授乳』が始まれば時間の感覚なんてなくなってしまうために、こうしてひとらしい時間を過ごすことが何より大切になっていた。

 ガランはそんなフェイの食事風景を、にこにこと嬉しそうに眺める。

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