淫妖奇譚 弐

02



「直せ、ってのもなぁ」

 出来ないことはないが、それでは逆柱は消えてしまう。双葉は懐から札を取り出した。

「勝手に生んどいて、迷惑かけたら即抹殺、は、ないよなぁ」

 だから、逆柱は残したままでの、解決策。

『双葉、上だ』
 じゅるッ!

 静かだが強い犬神の声に双葉が上を向くのと、濡れた音がして札を持つ双葉の手が絡め取られるのが、同時だった。

「なッ?!」

 天井にへばりついていたのは、たくさんの札のような短冊をまとった、痩せた老人のような妖だった。顔はどことなく馬に似ていて、その口から伸びた長い長い舌が、双葉の腕を捕らえていた。

「天井嘗…っ」

 名の通り、天井を舐めてしみや暗がりを作る妖で、一般人の眼には見えない。

 ぬるぬるする感触が気持ち悪いが、力が強くて振り切れなかった。

『祓うか?』
「えー…いいだろ。害もないし依頼されてないし」

 双葉と犬神の意識が、天井嘗に逸れた、その一瞬。

 ジュルルルッ!
「うひゃっ?! あッ?! あッ?!」

 逆柱から垂れ下がっていた隆起が伸び、双葉の袴の裾や、腰の左右の隙間から衣服の下に潜り込み、下布にまでねじ入ってきた。
 突然妙なものに敏感な場所を刺激され、双葉は身をくねらせる。

「ふ、ぁっ…ぁ、ま、待て、やめッ…あ、ぁんっ、そ、そんなっ…!」


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