君が判りません・前篇

05


 戦慄したのは、ベッドに置かれた、ビデオカメラの存在。

「――ッ!」

 咄嗟に後ずさった俺を後藤が捕まえ、にこりと笑う。

「さぁ先生。どうにも先生は俺のものだって自覚が足りないみたいだから、躾け直してあげる」

 言って、ベッドにうつぶせに放り出された。
 ぎし、とスプリングが鳴くのを聞いた途端、かあああッ、と自分でもわけが判らないほど、体温が上がった。

「ッあ…?」
「? せんせ?」

 後ろから後藤が覆い被さるようにしてくる。

 ぎしっ。
「〜〜ッ!」

 俺は耐え切れず、両手で口許を覆った。どうしてだろう。判らない、判らない、のに。

――恥ずかしいっ…!

 今更だと自分でも思う。
 今まで散々犯されて来たし、痴態なんて途方に暮れるほど撮られて来たというのに。

 後藤も俺の急激な変化に戸惑っているようだ――手にしたカメラの録画ランプがばっちり点灯しているのが癪だが――。

「先生? どうしたの? あ、またお漏らししそうなの?」
「ッ!」

 さすがにこの質問にはぶんぶん首を振った。後藤はどこかつまらなそうな顔をして――この野郎…――、「じゃあなに?」と俺の顔を覗き込んで訊いた。

 ぎしッ。
「っ…!」

 スプリングの音。躯の沈む、柔らかなマット。後藤の匂いのする、シーツ。

 ベッド。

「!」

 そうか、と俺がその理由に気付いた瞬間、後藤がニヤリと笑った。


「そっか。先生とベッドでちゃんとエッチすんの、初めてだ」



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