君が判りません・前篇

03


 そして木曜が終り、金曜の朝も昼も何事もなく過ぎ。放課後も終って、俺が帰宅しようと駐車場へ向かうと、そこに後藤がいた。

「――っ!」

 以前そこでしてしまった粗相を思い出して、俺は顔を真っ赤にする。
 だが後藤は平然と、

「先生。俺んちまで、送って?」

と、携帯電話を見せながら言ったのだった。






 後藤の家は、12階建てマンションの最上階、ワンフロアにふた部屋しかないそこの、ひとつだった。
 マンションを見上げ、かなりいい物件ではないかと、俺はこっそり思う。

 だが深入りはしない。車を止めて、助手席に身を沈めている後藤に「着いたぞ」声を掛けた。
 後藤は閉じていた瞼を上げると、「まだ」と言った。

「俺んち、ここじゃないよ。ちゃんと部屋まで送って」

 この時点で。
 確かに俺は、身の危険を感じてはいたのだが。
 それでも、携帯電話をちらつかせられると、抗うことなど出来るはずもなくて。

 結果。

 後藤がドアを開けた途端に中に突き飛ばされ、玄関で押し倒されてキスされて、抵抗も虚しく、スラックスも下着も脱がされ、性器を晒してしまった。

 我ながら情けないとは思うが、後藤の技術が凄すぎるのだとも思う。

「ちょ、ごとっ…! だ、だめだ、こんな…!」

 教師が健康な生徒を家まで送り届けるだけでもルール違反なのに。

「今更だよ、先生。それに、家ん中入っちゃえば、誰も気付かないって」
「そッ、ぁ…っ! ぁっ、ぁっ、だ、だめだ、ごと…ん、ぁあ…っ!」

 玄関で、反応もしていない俺の性器を、後藤はさも当然のように口に含んだ。

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