卒業記念

03



「やッやめろよッ! な、何すんだよ! やめろっ…!」
「ほらジル、あれだよ。この国じゃ卒業式にボタンをあげる風習があるんだよ」

 司がめちゃくちゃを言う。案の定、ジルも反駁した。

「ッ外人扱いすんな! それ第2ボタンだけだろ! 欲しいならくれてやるから、これ外せよッ!」

 怒りの興奮で目許を赤らめるジルは、だが今の状況の慎吾達にはとても扇情的に映る。

 シャツを開き、インナーをめくると、驚くほど白い肌が覗いた。純血のこの国の人間では、そうそうない色だ。
 そして胸には、淡いピンクの粒がある。

「たまんね…」

 呟いて、司がそこにむしゃぶりついた。

「ひゃあッ?!」

 びくんっ、とジルの躯が跳ねる。

 昭平も胸の粒を口に含み、ジルは縋るように慎吾を見た。
 3年間、ペアを組んだパートナー。この悪夢を終らせるのは慎吾しかいないと、頼り切った眼。その涙に潤んだ瞳に、慎吾は苦笑した。

 そんな、睫毛を涙で濡らされると、都合のいい誤解をしたくなる。その唇が、『もっと』とねだるのを見たくなる。

「ごめんジル。最後の、思い出をくれよ…」
「やっ…慎吾…?!」

 動けないジルの脚に跨って、バックルを外す。青い顔でジルは懸命に首を振るが、誰もやめようとはしない。

 ジルが藻掻く度にネットがギチギチ啼いて、拒絶するジルの声は疲労と恐怖でどんどん小さくなっていく。

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