不協和音

05


 手をばたつかせて下着を捜すのだが、腰を押さえられている所為で、膝の下まで落ちた下着には届かない。

 卓也の眼鏡の奥の目が、ぎらりと光る。

「兄さん、綺麗だ…」
「ばっ…! ぁ、や、やめ、あんッ!」

 卓也の手が俺のちんこを掴む。それは既に半勃ちで、俺は泣きたくなる。

「な、んで…やめ、やめろよ…ッ! お前、佐藤が好きなんだろ?!」

 必死になって喚くと、卓也は何故か溜め息を吐いた。

「兄さん、それ、本気で言ってる?」
「ぅ…?」
「ここまでしても、届かないの?」

 ぎゅう、と抱き締められる。剥き出しのちんこが卓也の制服に擦れて、そしてその制服の内側で、卓也のちんこが硬くなっている事を知って、俺の顔は赤から蒼に色を変えた。

「ゃっ…たく、卓也、お前…っ」

 わななく唇で言うと、卓也はうっとりした顔で、啄むようなキスを一度した。


「俺が好きなのは、俺の実の兄、酒井智也、あなただよ…兄さん」


「ひッ──!」
 声が引き攣る。

 俺は男で、男色の趣味はない。ただ男も女も関係ないくらいのキス魔で、友人とはふざけてキスし合ったこともあるが、それだけだ。
 だが今の俺はシャツをたくし上げられ、ズボンも下着も下ろされて、ほとんど丸裸。
 俺を好きだと言う弟が、ここまでしたのだから、行き着くところはひとつしかない。

「嫌ッ! 嫌だ、放せ! 放──」

 卓也の唇。悔しいがとろんと思考が蕩けてしまう。何度もキスをしてきたが、こんなことは数えるほどしかない。

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