in 【化学室】

赤羽 涼の場合 3


 少し食べる手を止めて、視線を落とす。きゅ、と小さく唇を噛み、腰が僅かに動く。

「どうかしましたか? 黒川先生」
「ぃ、いえ、なにも…」

 かすかに首を振る真尋の頬は、けれどほんのりと赤い。
 ふるりと震える真尋の手を取り、涼はそこについたフィナンシェの欠片を舐め取った。

「っ、」

 ぎゅっと真尋が目を瞑り、かぁっと一気に頬に血が昇る。面白くて、涼はゆっくりと彼の指を舐め、吸いついて、しゃぶった。

「っふ、ぅ…っ、ゃ、やめて下さい、赤羽先生…、な、なに、を…」
「黒川先生が…いえ、真尋さんが、可愛いので、つい」
「はぁ…っ、や、か、可愛いなんて…っ、や、め…ぁ、あか、ばね、せんせ…っ」

 媚薬を使ったとは言えど、指だけでぶるぶると震える真尋。

(指が弱いんですか…)

 良いことを知ったものだ。指ならいつでも咥えて、可愛がってあげることが出来る。

 そっと肩を抱き寄せ、キスをする。真尋の眼鏡が少し邪魔だが、これを外してしまうとほとんど何も見えないのだと言っていたから、それではつまらない。
 カッ、と真尋の目が見開いて、逃げようとするので、手首を引いて項を掴み、離れられないようにしてからゆっくりと舌を絡めた。

「ン…ん、ぅ…っ」

 たどたどしく逃げようとする舌。だが、何度も絡めてぬるぬると擦り付け合う度に、へなへなと真尋の躯全体から力が抜けていくのが判った。

 溢れそうになる唾液を飲み込めず、苦しげに息をする真尋に、性経験があまりないことを知る。

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