in 【化学室】 赤羽 涼の場合 2 どうぞと代わりにお菓子を差し出せば、真尋は子供のように微笑んだ。 「さっきも校長からクッキーを頂いたんですが、いいですね、お菓子を作れるって」 「校長から?」 「ええ、【クロッカス。・デイ】なんだとかで。記念日なんだそうです」 「それで、黒川先生に?」 「幸せのお裾分け、だそうです」 釈然としない涼に構わず、もぐもぐと真尋はフィナンシェを頬張る。 いくつか食べてから、ふと気付いたように首を傾げた。 「赤羽先生は食べないんですか?」 「ええ、私は家でたくさん食べてしまいましたので。これは、黒川先生のですよ」 「な、なんか申し訳ないですね…。一緒に食べませんか?」 (…かわいい…) 大の男が、一緒に、だなんて、普通なら鳥肌ものだが。 恋は盲目だとでもいうのか、涼は「いいんです」と手を振って、食べる真尋をじっと観察した。 それはもう、じっと。 「…あ、赤羽先生、な、なにか?」 「いえ?」 にっこり笑ってごまかす。 (超即効性、という謳い文句でしたから、そろそろ効いてもいいと思うのですが) 笑顔の裏でそんなことを考えて、涼はにこにこと真尋を観察し続ける。 とりあえずは笑みを返した真尋だったが、しばらく居心地悪そうに小さくなってフィナンシェを食べ、そして。 「…、」 [*前] | [次#] /87 『頂き物』へ / >>TOP |