in 【音楽室】

山本 海の場合 1


※(目隠し/前立腺攻/拘束)

 彼のことが、好きだった。

 1年のときからずっと好きで、彼の傍にいたいが為に、彼の好きな音楽を覚えて、好きなものを食べて、どんな話でも良いように合わせられるようにした。
 親友で良かった。

 だけど、想いも3年目になると、つらくなってきた。
 海には彼――渉しかいないが、渉には、海以外にもたくさん友人がいるから。

 渉が誰かに微笑む度に、気持ちがざわついた。

(俺の、渉くんなのに)

 渉が微笑む相手にも勿論、けれど矛先は渉自身へと向いた。
 判って欲しかった。海が、どれだけ渉のことを愛しているのか。

「…よぉ」

 音楽室に入ってきた彼に、海は笑みを浮かべる。

「この呼び出し、海か? なんでこんなめんどくせぇこと」
「呼び出し? 俺じゃないよ。俺は誰かに渉くんがここだって聞いて」

 誰に聞いたのだったか。思い出そうとして、それよりも渉が誰かの呼び出しに応じたことへの憤りが勝った。

「えー? ンだよ、じゃあ誰だよ、めんどくせぇな」
「あ、渉くん、今誰か覗いてたよ」
「あン?」

 彼が入ってきたばかりの入り口を指差すと、渉はくるりと振り向いて廊下を確認する。
 海は用意してきた大判のハンカチを取り出して、その背後へ近付いた。

「誰もいねぇぞ?」
「あれ、そう? おかしいな…」
「そう言や、海はなんの――っ?」

 そして手早く目隠しをする。暴れようとして見当違いな方向に振り上げられた手首も、あっさりと背中へ捻る。

「ぎっ、ぃ、ってぇな! 何すんだよ、離せっつの!」


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